[Vol.1253] ロシアの弱点は「量」ではなく「価格」

著者:吉田 哲
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原油反発。米ガソリン在庫の減少などで。122.33ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,857.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,500元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は777.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで849.85ドル(前日比1.3ドル拡大)、円建てで3,778円(前日比74円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月9日 12時45分頃 6番限)
7,970円/g
白金 4,192円/g
ゴム 266.7円/kg
とうもろこし 56,570円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ロシアの弱点は「量」ではなく「価格」」

前回は、「「増産順守」にはロシアの増産も必要」として、OPECプラスが先週決定した「増産」を達成するための条件について、筆者の考えを述べました。

今回は、「ロシアの弱点は「量」ではなく「価格」」として、ウクライナで蛮行を続けるロシアの弱点について、筆者の考えを述べます。

OPECプラスを牛耳って増産をはばんだり、インフレを生み出して西側に経済的ダメージや不安心理を供給したりするロシア。われわれが戦っている相手は手ごわいと言わざるを得ないでしょう。そのロシアには弱点はないのでしょうか。

ロシアの弱点は「原油価格が急落すること」であると、筆者は考えます。対象となる要素は「価格」であって、西側が制裁で縮小させている「量」ではありません。

「GDP(国内総生産)」は、国力を示すといわれています。ロシアのGDP(名目)は、上図のとおり、原油相場の変動とおおむね一致します。この間の二つの相関係数は+0.93と、連動性が非常に高いことを示しています(相関係数は-1から+1の間で決定する。-1に近ければ正反対に動く傾向が、+1に近ければ同じように動く傾向が強いことを示す)。

原油相場が100ドル台で数年間推移した2012年前後、ロシアのGDP(名目)は高水準となり、世界全体のランキングで上位一桁に入りました。「ロシアの国力」と「原油相場の推移」は密接な関係にあると言えます。

この点より、「ロシアの国力」を低下させるための最も有効な手段は、「原油相場を急落させること」だと言えます。現在のように原油相場が高止まりしていては、いくら制裁をしても、「ロシアの国力」を戦争ができなくなるくらいに削ぐことは、できないでしょう。

図:ロシアのGDP(名目)と原油価格


出所:IMF(国際通貨基金)のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。