[Vol.1256] 時代:脱「なにかあったらどうするんだ症候群」

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。121.81ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,824.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年07月限は774.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで900.2ドル(前日比0.7ドル拡大)、円建てで3,910円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月14日 17時45分頃 6番限)
7,855円/g
白金 3,945円/g
ゴム 254.2円/kg
とうもろこし 55,920円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「時代:脱「なにかあったらどうするんだ症候群」」

前回は、「金(ゴールド)は魔性の存在!?」として、人にとって金(ゴールド)はどのような存在か、筆者の考えを述べました。

今回は、「時代:脱「なにかあったらどうするんだ症候群」」として、前回述べた、「不安」抜きで金(ゴールド)市場を分析するために必要な「多角的な視点」に関連し、「時代」の側面から金市場を観察します。

時代が変われば「求められる人物像」は変わります。昨今の大学入試改革や働き方改革などを通じ、今の時代の「求められる人物像」が示されています。その人物像は、一言で言えば「変化に順応でき、強じんな心と高いコミュニケーション力を有する人」となるでしょう。

先日、国内大手メディアで元陸上アスリートの為末大氏の言葉を引用した記事を目にしました。今の日本に「なにかあったらどうするんだ症候群」がはびこっているという内容で、この30年間、日本が停滞した理由はこれを起点に説明できるとのことでした。

この症候群は社会に「安定と秩序」をもたらす一方、副作用として「停滞を生み、個人の可能性を抑制」するとのこと(症候群の中心となる世代の記載もあり)。この点より、今の日本に、「求められる人物像」が生まれにくいムードがただよっていると、言えます。

金(ゴールド)に限らず、世界中の多くの市場では時々刻々と、価格が停滞せずに動き、過去の常識では説明できない値動きが見られることもあります。停滞していたり、個人の可能性が抑制されたりしていては、こうした市場と正しく向き合うことはできません。

「なにかあったらどうするんだ症候群」の考え方では、市場の動向を見誤ります。われわれはこの症候群から一刻も早く抜け出し、「求められる人物像」に近づく必要があります。そこで必要なことは、今が「VUCA(ブーカ)」の時代にあると認識することです。

「VUCA(ブーカ)」は、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」の意味で、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉です。

同症候群がもたらす「停滞」は、「過去の常識・成功への執着」が大きいと、筆者は考えています(執着≒思考停止)。今の時代が「VUCA」の状態にあると認識した上で、過去から自分を引き離すことができれば、「求められる人物像」に近づくことができると考えます。

金(ゴールド)市場にも「過去の常識」があります。本レポートが否定的にとらえる「金(ゴールド)=不安」です。金(ゴールド)相場が不安「だけ」で急騰し得たことは、過去の常識です。こうした常識を捨てることは、市場関係者に課せられた義務であると筆者は考えています。

図:「なにかあったらどうするんだ症候群」と「VUCA(ブーカ)」「求められる人物像」


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。