[Vol.1266] 「インフレ退治」に成功すれば支持率上昇

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。110.72ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,824.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,785元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年08月限は720.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで924.75ドル(前日比0.6ドル拡大)、円建てで3,994円(限月交代のため前日比なし)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月28日 11時07分頃 6番限)
7,894円/g
白金 3,900円/g
ゴム 257.0円/kg
とうもろこし 53,200円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近)日足
出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「インフレ退治」に成功すれば支持率上昇」

前回は、「「利上げ攻勢」で原油は下落」として、この2週間の原油相場の変動に注目しました。
今回は、「「インフレ退治」に成功すれば支持率上昇」として、「インフレ退治」がリーダーたちの支持率向上に結び付くことについて、述べます。

インフレが鎮静化すれば、西側の国民が抱える不満の多くは解消します。このため、原油価格を下落させ、インフレを鎮静化にみちびいたリーダーや思いを同じくする組織は、国民の支持を得やすくなります。西側のリーダーにとって原油相場の下落は強い「是」なのです。

ジョー・バイデン米大統領が、自国の石油会社を過剰ともとれる強い言葉で非難したり、過去の出来事を棚上げしてまで主要産油国に増産を働きかけたりしているのも、同じ思惑があってのことです。インフレを退治すれば、バイデン氏は11月の中間選挙を有利に進められます。

先週、主要メディアが、11月の米中間選挙に立候補する候補者を決めるための予備選の途中経過を報じました。「原油価格の上昇は増税のようだ」と現職時に産油国を痛烈に批判して、原油高を否定したドナルド・トランプ前大統領が推薦する候補の9割超が勝利したとのことでした。(上下両院と州知事選の合計。半数超の州での投開票終了時点)

この状況より、「インフレ退治を実現しないまま、11月を迎えることはできない」という、バイデン氏の思惑が垣間見えます。2024年の大統領選で出馬をもくろむトランプ氏をけん制するためにも、原油価格を下げ、インフレを鎮静化し、多くの支持を得る必要があります。

また、6月19日に投開票が行われたフランスの国民議会(下院)の決選投票では、エマニュエル・マクロン大統領が率いる与党連合が過半数の獲得に失敗しました。インフレ対策への批判に悩まされたことが、敗北の一因とされています。

西側主要国のリーダーたちにとって、インフレ鎮静化は喫緊の課題です。インフレを鎮静化できれば、支持を集めやすい状況にあるとも言えます。今後も西側では、原油価格を下落させるべく、各種施策が繰り出され、利上げムードが続くことが予想されます。

図:「インフレ退治」に成功すれば西側のリーダーの支持率は向上する
「インフレ退治」に成功すれば西側のリーダーの支持率は向上する
出所:筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。