[Vol.1269] 危機は壮大なテーマで起きているとみるべき

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。104.77ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,796.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は12,975元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年08月限は696.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで920.5ドル(前日比1.05ドル縮小)、円建てで3,968円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月1日 大引け 6番限)
7,772円/g
白金 3,804円/g
ゴム 255.5円/kg
とうもろこし 48,720円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「危機は壮大なテーマで起きているとみるべき」

前回は、「大衆迎合、ESG神聖化が戦争の遠因!?」として、ウクライナ危機が発生した経緯について、筆者の考えを述べました。

今回は、「危機は壮大なテーマで起きているとみるべき」として、今後のウクライナ危機の展開について、筆者の考えを述べます。

ロシアは西側を攻撃する術を知っている。ロシアで反西側感情に火が付き、攻撃する動機が整っている。西側のリーダーは断固たる措置を講じることができない。マネーがじゃぶじゃぶで、インフレの素地がある。こうしたタイミングを、抜け目ないウラジーミル・プーチン大統領は見逃さないでしょう。(詳細は前回述べたとおりです)

ロシアは、ウクライナに侵攻し、西側に制裁を強化させて「買わない西側」を、ロシア自身は自国資源を囲い込んで「出さないロシア」を実現し、西側をも巻き込み、西側・ロシア両面から供給不安をあおり、高インフレ進行を後押ししました。

実際に今、西側はとてつもないダメージを受けています。西側経済はリセッション入りする懸念が生じ、その上、リーダーたちの支持率は低下し、政情が不安定化しています。およそ100年前のレーニンの言葉が、現実のものになっているわけです。

上記より考えられる、ウクライナ危機が終わるために欠かせない要素は、ロシアの反西側感情が鎮まる(西側が脱炭素を緩める)こと、西側のリーダーが大衆に迎合しなくなる(毅然としたリーダー、もしくは大衆を完全に操ることができるリーダーが誕生する)こと、マネーがじゃぶじゃぶな状態を解消する(QT(量的引き締め)を進める)こと、です。

現時点では、どれも難易度は高いと筆者は考えます。このため、まだしばらく、ウクライナ危機は続くと考えます。ウクライナ危機が終わらなければ、「原油市場」を舞台とした「世界大戦」は続き、原油相場は今後も高止まりする可能性があります。

また、年内程度の中期的な期間で見た場合、以下のとおり、足元のインフレ減退観測が、ゆくゆくは原油相場の上昇要因に変わるシナリオも想定できます。

前回までの4回で述べたとおり、インフレとウクライナ危機は、「原油市場」を通じて密接に結びついています。インフレを鎮静化するための最も有効な策は、あくまでもウクライナ情勢の鎮静化であり、金利引き上げという西側の策ではない、と考えます。

ウクライナ情勢が鎮静化する兆しが見えた時が、本格的に原油相場が下がる、インフレが鎮静化するタイミングだと、筆者は考えています。

図:年内程度の時間軸で考えられる原油相場への上昇圧力発生シナリオ


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。