週刊石油展望

著者:三浦 良平
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比1.69ドル高の97.72ドル、ブレント原油は5.84ドル高の105.43ドルとなった。

 前週末の海外原油は安値からの戻りを継続。バイデン大統領がサウジのムハンマド皇太子らと会談したが、具体的な増産の確約は得られず、また、欧米の株式が上昇し為替もドル安傾向となったことで原油も買い意欲が強まる形となった。

 先週は露ガスプロムが不可抗力条項を発動して急騰後はエネルギーの供給懸念と世界的な景気減速懸念が綱引きする展開となった。週明け18日は急上昇。ロシアのガスプロムが欧州向けで不可抗力条項を宣言、先週末に再稼働予定のノルドストリーム1は定修が長引くことによる欧州のエネルギー供給懸念が意識された。翌19日は3営業日続伸。FRBの1.0%の利上げ見通しが後退してNYダウが堅調に推移、またECBは0.5%の金利引き上げとの見通しからドル安となり原油買いが継続された。20日は反落。EIAの週報で米ガソリン在庫が350万B増加したことからガソリン需要の先細りが意識され原油売りの流れとなった。翌21日は大幅続落。ノルドストリームを通じた欧州向け天然ガス供給が予定通り再開したことが供給懸念を和らげた。また、ECBが0.50%の利上げで合意し景気見通しに不透明感が強まったことや、7月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数が弱かったことも原油の重しとなった。
 
NY原油チャート
 
 今週の原油相場はWTIの100ドル超えで強い上値抵抗があり、上値の重い展開が予想される。14日に88.23ドルまで底割れしたWTIは19日にはロシアの供給不安から100.99ドルまで急反発したものの、世界的な景気後退懸念から上値を削る流れ。強弱材料が入り乱れており不安定な動きが継続しそうだ。NYダウが堅調な動きとなっており、ドル高一服から安値では買い気が強いものの、26~27日のFOMCを控えて様子見ムードとなっている。FOMCで予想通りの0.75%の利上げで株式市場が強い動きとなれば原油市場にも買い安心感が生まれるだろう。ただ、インフレ対策から1.0%の利上げとなればWTIは85ドル前後まで再び底割れとなる懸念がある。今週は、より金融マーケットの動きに注意が必要な一週間となりそうだ。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。