週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比7.87ドル安の89.23ドル、ブレント原油は12.29ドル安の94.73ドルとなった。

 前週末の海外原油マーケットは、OPECプラスの6月の産油量が合意水準を日量284万B下回っており、現行の生産割当の達成に苦戦している状況を鑑みるとOPECプラスの追加増産は困難との見方が強まり堅調に推移、一方で米リグ稼働数が23ヶ月連続で増加したことを受けて高値では売られる展開となった。

 週明けは、米欧やアジア各国の製造業景況指数が弱い内容だったことから世界の景気後退懸念が高まり軟調な推移となった。また、サウジアラビアが9月の増産を呼びかける可能性があると伝わったことで下げ幅を拡大する展開となった。翌火曜日は、前日の下落を受けて買い戻しが入り、OPECプラスにおいて産油国の増産余力は乏しく、追加増産は見込みづらいとの見方が強まったことから反発。3日は、EIA在庫統計において原油やガソリン在庫の増加が示されたことが重しとなったほか、イラン核合意の再建協議が再開すると伝わったことも嫌気され売られる展開となる。一方、注目のOPECプラス会合では日量10万Bの増産が決定したものの、生産割当の達成に苦慮している現状を鑑みるに実際の産油量はほとんど増加しないとみられ、下値を支える格好となった。4日も続落。主要国の景気見通しが悪化している中で需要の下振れ懸念が高まり引き続き売りに押された。

NY原油チャート

 今週の原油マーケットは、下落方向を睨みながら下げ止まりポイントを見極める展開となりそうか。テクニカル面では、WTIで95ドル前後のタプルボトム水準を割り込み、さらに下へと動きやすいカタチとなってきた。価格水準的には、2月のウクライナ侵攻以前に戻っており、世界的なリセッション懸念からもう一段売られるのか、あるいはロシア産の締め出しによる欧州を中心にしたガスを含めたエネルギー供給懸念は引き続き横たわっており、買いが入ってくるのか。再開したイラン核合意の再建協議の行方にも要注目である。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。