[Vol.1311] 危機はどうなれば終わる?長期化必至?

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。88.75ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,716.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,385元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年10月限は699.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで892.75ドル(前日比6.65ドル縮小)、円建てで3,930円(前日比19円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月1日 大引け 6番限)
7,614円/g
白金 3,684円/g
ゴム 218.8円/kg
とうもろこし 48,690円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「危機はどうなれば終わる?長期化必至?」

前回は、「西側諸国も危機沈静化を難しくしている」として、米国国民が感じる「最も緊急な問題」の順位を確認しました。

今回は、「危機はどうなれば終わる?長期化必至?」として、筆者が考える、ウクライナ危機が長期化するシナリオについて、述べます。

以下の理由で、ウクライナ危機の早期鎮静化は難しいと筆者は考えています。いずれもこの半年間で強まった要素です。

・西側で大衆や中央銀行の視点のずれが拡大している。
・戦後体制の調整・構築に相当の時間を要する。
・西側が高インフレにあえぎ、金融・経済が不安定化している。
・原油の「一物二価」を好感している国・企業が増え、世界が反戦で一致できない。

また、以下の理由で、西側がロシア軍を武力で制圧することはできないと考えます。
・ウクライナがNATO※に加盟していないため、NATOにロシア軍を攻撃する口実がない。
・ロシアが常任理事国であるため、国際連合主導で攻撃を決定することができない。
・一定数の国民が攻撃を許さず、西側のリーダーたちは攻撃を決断できない。
・ロシアからの甚大な跳ね返り(核攻撃など)の危険がある。
※NATO:北大西洋条約機構。西側諸国の軍事同盟。

上記より、当面、西側はインフレ退治に腐心し、ウクライナ危機を沈静化できない状態が続くと考えられます。ロシアとその友好国、産油・産ガス国を含んだ全体像(筆者イメージ)は以下のとおりです。

ロシアは、「一物二価」で、産油・産ガス国や友好国に恩恵をもたらして支持を拡大しています。一方、「非友好国」である西側諸国は、ロシアがウクライナ危機を起こしたことで発生したインフレによってインフレのループにはまり、身動きがとれない状態に陥っています(上述のとおり攻撃もできない)。

その上で、西側はロシアなどの産油国が嫌う「脱炭素」を推進しているため、なおのこと歩み寄りが進みません。

ウクライナ危機を長期化させたくなければ、西側が、インフレのループから抜け出すこと(根本原因を直視すること)と、交渉なしに「脱炭素」を強行しないこと(交渉なしに相手が嫌がることを強いないこと)を、実践する必要があると、筆者は考えます。

図:ウクライナ危機長期化シナリオ(筆者イメージ)
図:ウクライナ危機長期化シナリオ(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。