[Vol.1312] 危機長期化は複数経路で金相場を押し上げる

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。88.34ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,713.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,280元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年10月限は695.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで902.45ドル(前日比1.35ドル縮小)、円建てで3,989円(前日比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月2日 16時42分頃 6番限)
7,649円/g
白金 3,660円/g
ゴム 216.8円/kg
とうもろこし 48,680円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「危機長期化は複数経路で金相場を押し上げる」

前回は、「危機はどうなれば終わる?長期化必至?」として、筆者が考える、ウクライナ危機が長期化するシナリオについて、述べました。

今回は、「危機長期化は複数経路で金相場を押し上げる」として、筆者が考える、金(ゴールド)を取り巻く七つのテーマについて、述べます。

ウクライナ危機の長期化は、不安の長期化を意味します。不安は以下のように分けることができます。

・大衆が抱く、生活が脅かされることで生じる不安(渦になれば「有事ムード」に発展)
・「中央銀行」が抱く、雇用情勢などが脅かされることで生じる不安
・社会全体が抱く、「大局的な社会変化」への不安

これら三つの不安は、以下の金(ゴールド)市場を取り巻く七つのテーマの、(1)有事のムード、(5)中央銀行、(7)大局的な社会変化にあてはまります。

ウクライナ危機が長期化した場合、短中期、中長期、超長期いずれの時間軸においても、不安がかき立てられ、さまざまな投資家の金(ゴールド)を保有する意欲が高まる可能性があります。

また、ウクライナ危機が長期化すれば、しばしば株価が不安定化する可能性があります。そうした場合は、株の代わり「代替資産」の側面から金(ゴールド)が買われやすくなると考えられます。

ロシアが非友好国に分類しない中国が「一物二価」の恩恵を受けて、経済回復が進んだ場合、宝飾需要が増す可能性もあります。

仮に、米国の利上げで急速にドル高が進み、金(ゴールド)相場に下落圧力がかかったとしても、ウクライナ危機起因の複数の上昇圧力がそれを相殺し、長期視点では、相場は上向くと考えます。

今回までの5回で、ウクライナ危機勃発から半年が経過し、各種状況を確認した上で、金(ゴールド)相場が今後どのように推移するかを、考えました。

図:金(ゴールド)を取り巻く七つのテーマ(筆者イメージ)
図:金(ゴールド)を取り巻く七つのテーマ(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。