週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比5.45ドル安の88.21ドル、ブレント原油は6.57ドル安の93.93ドルとなった。

 前週末の海外原油は反発。ジャクソンホール会合でパウエルFRB議長がインフレ抑制を重視し、金融引き締めを続ける構えを示したことで売りが先行した。しかしUAEがサウジの減産示唆を支持するとの報からプラスサイドまで切り返す展開となった。

 先週はOPECプラスの減産の可能性や、リビアなどでの地政学リスクの高まりから買いが先行したが、利上げ観測による景気後退懸念が上値を抑える展開となった。29日は続伸。来週5日のOPECプラス会合で減産を協議するとの思惑が高まっていることが要因。サウジの減産示唆に対して支持する国が多いとみられている。また、リビアやイラクで武力衝突が激化していることから地政学リスクも高まっていることも支援要因となっている。30日は反落。米国が0.75%の大幅利上げを続けるとの観測が強まっているなか、冬場のエネルギー危機に直面しているユーロ圏でも景気後退に目をつむって大幅利上げに踏み切るとの観測が圧迫要因となった。来週のECB理事会において0.75%の利上げが警戒されている。またAPI統計では原油在庫が59.3万B増加となった。31日は続落。8月のユーロ圏の消費者物価指数が前年比9.1%まで伸びが加速しており、来週のECB理事会での積極的な利上げ観測が強まったことが重しとなった。また中国でゼロコロナ政策が続いており、経済活動などの制限が繰り返されていることから石油需要鈍化が懸念されていることも圧迫要因となっている。1日は続落。序盤に米国株が軟調に推移したことが重しとなったほか、景気悪化懸念による需要減少が意識される格好となった。

NY原油チャート

 今週の原油相場は引き続き上値重い推移となるか。米国の大幅利上げ継続に続き、来週のECB理事会でもインフレ抑制のために大幅利上げに踏み切るとの観測が高まっている。また中国はゼロコロナ政策により景気回復が遅れており、石油需要の減少が懸念されていることも上値を抑えると思われる。現状はOPECプラスの減産の可能性が相場を支えているが、減産となっても先述の通り上値は重く、また減産をしなければWTIで直近安値の85ドル割れる展開も想定される。まずは5日のOPECプラス会合の結果を待ちたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。