[Vol.1313] ロシア産原油の価格上限を設定

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。89.08ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,722.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,405元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年10月限は703.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで897.95ドル(前日比6.35ドル縮小)、円建てで3,983円(前日比16円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月5日 18時05分頃 6番限)
7,701円/g
白金 3,718円/g
ゴム 218.6円/kg
とうもろこし 49,750円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ロシア産原油の価格上限を設定」

前回は、「危機長期化は複数経路で金相場を押し上げる」として、筆者が考える、金(ゴールド)を取り巻く七つのテーマについて、述べました。

今回は、「ロシア産原油の価格上限を設定」として、G7で合意したロシア産原油価格上限設定について、述べます。

先週、G7(主要7カ国)の財務相はロシア産原油の価格に上限を設けることで合意しました。ウクライナ侵攻を続けているロシアの戦費を削減する狙いがあります。

これまで、西側諸国(G7含む)は、「買わない」ことで戦費を稼げないようにする「量」に着目した制裁を行ってきました。今回の合意で、「金額」に着目した制裁も同時進行することになったわけです。

具体的には、一定単価以上のロシア産原油を運ぶタンカーに、保険をかけられないようにします。タンカーにかける海上保険の9割は、欧米の企業が担っていると報じられています。

保険をかけずにタンカーを航行させることは、荷主も受け取り主も、リスクを被ります。このため、この措置が実施されれば、上限以下の単価のロシア産原油が流通するようになると、みられます。

ロシア産原油の流通量を減らさず(供給懸念を拡大させず)に、ロシアの戦費を減らす策として、注目が集まっています。では、この策に、抜け穴はないのでしょうか。想定される、今回の策の問題点を挙げてみます。

想定されるロシア産原油価格上限設定の問題点
・陸上輸送が対象ではない。
・およそ3割を輸入する中国がG7メンバーではない。
・国際指標も下落した場合、サウジなど中東産油国の財政が悪化する。
・「一物多価」状態が拡大。
・売るかどうかはロシア側の判断。

対象範囲が海上輸送であること、中国が対象でないこと、国際価格も同時に下落する可能性があることなどが、どのような影響をもたらすのでしょうか。次回以降、具体的な影響を述べます。

図:G7によるロシア産石油の上限価格設定について
図:G7によるロシア産石油の上限価格設定について

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。