週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比2.26ドル安の83.06ドル、ブレント原油は1.23ドル安の89.97ドルとなった。

 前週末の海外原油は欧州のエネルギー供給ひっ迫懸念が支えとなったほか、イラクの石油輸出港でオイル漏れが見つかり、一時輸出作業が停止したと伝わったことが支えとなり小反発した。一方でFOMCを控えて大幅利上げへの警戒感からリスクオフムードが強まっていることは上値を抑える格好となった。

 先週はFOMCでの大幅利上げによる景気悪化懸念が重しとなる中で軟調な推移となる一方、ウクライナ侵攻の長期化が懸念されたことで一時上昇する場面も見られた。週明けはバイデン大統領が10月までとしていた戦略石油備蓄の放出を11月も継続すると伝わったことが重しとなった一方、OPECプラスが8月の原油生産が生産目標を大きく下回ったことが支えとなり安値から切り返す格好となった。翌20日はFOMCを控える中で、大幅利上げによる景気悪化懸念からドル高・株安が進行したことからリスクオフムードが強まったことが重しとなり軟調な推移となった。翌21日はアジア時間にプーチン大統領がウクライナ侵攻を巡り部分的に国民を動員する大統領令に署名したと伝わったことで、ウクライナ侵攻の長期化やロシアへの追加制裁によるエネルギー需給のひっ迫懸念が強まり、一時大きく上昇する場面が見られた。一方でFOMCにおいて0.75%の利上げが決定し、年内までに1.00~1.25%の追加利上げを行う見通しが示されたことから景気悪化懸念が強まると、ドル高・株安進行につれ安となる形で原油もマイナスサイドまで下落する格好となった。

NY原油チャート

 0.75%の利上げは予想通りとなったが、年末の政策金利見通しが前回の3.3%から4.4%に上方修正され、年内にあと1.00%~1.25%の利上げが行われる見通しとなったことから景気悪化懸念が意識されやすくなっており、ドル高・株安進行や石油需要の減少懸念が警戒される中で上値重くなりやすそうか。一方でロシアによる国民の部分動員でウクライナ侵攻の長期化への懸念や欧州のエネルギー供給ひっ迫感が高まっていることは支えとなりそうだ。目先はWTIベースで80ドル割れを試す展開を想定しておきたい。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。