[Vol.1328] 米エネ業界にとって、欧州は今や最大の輸出相手

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.44ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,631.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は13,280元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年11月限は606.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで795.6ドル(前日比0.45ドル拡大)、円建てで3,694円(前日比9円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月28日 11時44分頃 6番限)
7,537円/g
白金 3,843円/g
ゴム 230.2円/kg
とうもろこし 49,500円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米エネ業界にとって、欧州は今や最大の輸出相手」
前回は、「欧州では玉突きで需給ひっ迫・価格上昇が発生」として、EUのエネルギー輸入額(石炭、石油、天然ガスなど)について、書きました。

今回は、「米エネ業界にとって、欧州は今や最大の輸出相手」として、米国のLNGと原油の輸出事情について、書きます。

以下のグラフのとおり、2021年後半から、米国からのEU向けLNG(液化天然ガス)輸出量が大きく増加しています(グラフ上、オレンジ線)。欧州の天然ガスの高騰をきっかけとした、代替調達需要などが要因とみられます。

ウクライナ危機勃発以降、EU向けLNG輸出量は、「買わない西側・出さないロシア」がきっかけで起きている需給ひっ迫が追い打ちをかけ、高水準を維持しています。

2022年4月は、統計で確認できる2015年1月以降の最高となりました。米国のLNG輸出量におけるEU向けの割合は58%、アジア向けは27%です(2022年7月時点)。

米国の原油輸出量(グラフ下)は、ウクライナ危機勃発後に、増加傾向が鮮明になっています。LNGと同様、「買わない西側・出さないロシア」がきっかけです。2022年7月は、統計で確認できる2015年1月以降の最高となりました。

また、輸出単価(輸出額÷輸出量)に着目すると、LNGは欧州の天然ガス価格が高騰し始めた2021年後半から、原油はウクライナ危機勃発後から、上昇が目立ち始めたことがわかります。

EU向けとアジア向けを比べると、最近では、ともにEU向けの方が高い傾向にあります(原油においては、2022年7月時点でEU向けがアジア向けに比べて、1バレルあたりおよそ6ドル高い)。

米国のエネルギー関連企業にとって、「量の増加」と「単価の上昇」は、大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。バフェット氏がオクシデンタル・ペトロリアム社の株を保有しているのも、この点が一因である可能性があります。

また、数ある関連企業の中でも、比較的単価が高いEU向けの輸出を手掛ける企業は、より大きな「うまみ」を享受していると言えるでしょう。

図:米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)


出所:U.S. Census Bureauのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。