嵐の前の静けさ

著者:菊川 弘之
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 ロシアからヨーロッパに天然ガスを送るパイプライン「ノルドストリーム」でガス漏れが起きていることについて、ヨーロッパ各国は破壊工作との見方を強めている。

 これまでに、デンマーク首相が「単なる事故とは考えにくい」と述べているほか、ポーランド首相も「意図的な破壊工作」だと非難。スウェーデン警察も、破壊行為の可能性があるとして捜査を始めたと発表。EUのボレル上級代表は「強固で団結した対応で臨む」との声明を発表した。

 一方、米軍当局者は28日、破壊工作と結論付けるのは時期尚早だとの見方を示した。

 ウクライナ政府は、「ロシアによるテロ攻撃だ。最善の対応と安全への投資は、ウクライナへの戦車供給だ」と発表。これに対して、ウクライナやポーランドを通過するパイプライン経由で、中央ヨーロッパに集中してエネルギー供給することを狙ったウクライナ側の攻撃だとする見方もある。バイデン大統領に近いポーランドの政治家が、「ノルドストリーム」ガス漏れ報道前後に「有難うUSA」とツィートした27日、ノルウェーとポーランドを結ぶバルティック・パイプが開通している。

 欧州では当初、ロシアが行ったとの意見が多かったが、数10億ドル(数千億円)の経費がかかったパイプラインを自ら破壊する必要があるか?ノルドストリームはロシアが欧州に対して持つ最大の切り札で、これを破壊するメリットはないとの見方が高まっている。

 そもそも、ロシアの国営天然ガス大手ガスプロムは、「ノルドストリーム」について、保守点検で主要機器に問題が見つかったことから、ドイツへのガス供給は無期限で停止されており、パイプラインを破壊せずとも輸送を止めている。パイプライン破壊の理由がない。


 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

日産証券主席アナリスト / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。
http://market-samurai.livedoor.biz/