週刊石油展望

著者:三浦 良平
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 先週末のWTI原油は前週比1.98ドル安の81.08ドル、ブレント原油は1.52ドル安の88.45ドルとなった。

 前週末の海外原油は大幅反落。FOMCで今後も利上げの継続が示されドル高が進展した。また、英トラス政権が発表した大型減税を含む経済対策がインフレや財政赤字拡大を招くとの懸念が強まり欧米の株式市場は急落、リスクオフの動きから原油市場もテクニカル的な売り圧力が強まり、WTIは期近ベースで1月以来の80ドル割れとなる78ドル台で取引を終了した。

 先週は世界的な景気悪化懸念から株安、ドル高のリスクオフの動きが強まり原油も大きく売り込まれてたものの、EUの冬場を控えた供給不安から安値からは大きく買い戻される動きとなった。週明け26日は世界的な景気悪化懸念から続落、NYダウは6月安値を下抜けしドル高も止まらずリスク回避の流れが続いている。来週のOPECプラス会合で100万Bの減産との報道もあったが、現状の生産量は生産目標を大きく下回っており、あまり材料視されなかった。翌27日は反発、ドイツとロシアを結ぶノルドストリーム1,2の両方からガス漏れが発生したことに加え、ハリケーン「イアン」によりメキシコ湾の海上油田が一部操業定期していることが買い戻しを誘い相場を押し上げた。28日は大幅続伸、英中銀が長期債の購入やQTの開始を延期すると発表し債券急落を収束させ金融市場の混乱が落ち着き株高となり原油市場も買い意欲が高まった。EIA統計では原油、製品ともに減少、製品需要も日量2077万Bまで回復し、輸出も高水準で推移しており下支え要因となった。29日は反落、米新規失業保険申請件数が予想外減少し雇用情勢の堅調さを示したことからインフレ対応の利上げが継続するとの懸念から株安となり、同じリスク資産の原油先物にも売りが波及する展開となった。

NY原油チャート

 今週の原油相場はWTI期近で85ドルを試す動きを予想する。世界的な景気悪化懸念から株安、ドル高の逆風により26日にWTIは80ドルの節目を大きく割り込み76.25ドルまで下落した後、ハリケーン「イアン」やOPECプラスの会合を控え買い戻しに支えられ81ドル台まで回復した。世界的な景気悪化懸念は根強いものの、NYダウが3万ドルを回復してOPECプラスが10月5日の会合で大幅減産合意となれば、WTIで85ドル近辺への戻りが期待される。ただ、チャート的には上値抵抗線となっている21日移動平均線が84ドル台で推移しており上値は重く、目先は売り場探しの展開とみる。

 

 

このコラムの著者

三浦 良平(ミウラ リョウヘイ)

エネルギー部課長として国内商社や地場SS等を担当。
世界経済の動向、石油現物価格、シンプルなテクニカル分析をもとに相場分析を行います。北海道出身。