[Vol.1331] エネルギーとドル上昇、貴金属、非鉄下落

著者:吉田 哲
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原油反発。OPECプラス追加減産報道などで。82.70ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,669.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 国慶節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心) 国慶節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで810.4ドル(前日比2.5ドル縮小)、円建てで3,817円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月3日 17時56分頃 6番限)
7,728円/g
白金 3,911円/g
ゴム 229.4円/kg
とうもろこし 51,000円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「エネルギーとドル上昇、貴金属、非鉄下落」

前回は、「引き続き石油・天然ガス関連株は強基調を維持か」として、筆者が考える原油市場の期間別の上昇・下落要因ついて、書きました。

今回は、「エネルギーとドル上昇、貴金属、非鉄下落」として、2022年度上期(4月から9月)の、主要銘柄の騰落率を確認します。

先週、2022年度上期の日経平均の下落幅が、21年ぶりの大きさ(下落率は6.8%)だったと、報じられました。この間の全体像を把握するため、アジア、欧米の主要株価指数、そして筆者の専門であるコモディティ(商品)における主要銘柄の騰落状況を確認しました。

起点となった3月末の前後は、コモディティ銘柄の多くが、今年の最高値をつけた時期でした。ウクライナ危機勃発(2月24日)をきっかけに、以下の事象が目立ったためです。

・「買わない西側・出さないロシア」による供給制約→エネルギー価格上昇
・エネルギー価格上昇を受けた電力価格高騰による精錬コスト上昇→非鉄価格上昇
・ロシア側同盟国による化学肥料の囲い込み→農産物価格上昇
・各種不安拡大による資金の逃避先需要増→金(ゴールド)価格上昇

ただ、最高値をつけた後は、おおむね6月上旬ごろから、下落が目立ち始めました。「CPIショック」が毎月のように起きるようになったのも、この頃からです。(CPI(消費者物価指数)は毎月上旬に公表される)

米国でCPIが高水準であることが示されると→インフレ退治の必要性が高まり→FRB(米連邦準備理事会 米国の中央銀行にあたる)が大幅な利上げを行う観測が浮上→景気減速懸念が強まり→景気動向に影響を受けやすい株価指数やコモディティが下落、同時に、ドルが上昇(金(ゴールド)が下落)という傾向が続いています。

米国ではCPIが示すようにインフレが深刻化している→米国国民の最大の関心事がウクライナ情勢から目の前のインフレに移り→リーダー達が中間選挙に向けた票稼ぎ(インフレ退治)を優先→インフレ退治のための「利上げ」正当化・強行→株安・ドル高、という傾向も、6月上旬以降、(表立って報じられないものの)目立っているとみられます。

ドル高(現在は主にFRBの方針や米国の有権者らの思惑によって作られている)は、国際的なコモディティ相場の指標とされる「ドル建て(価格の単位が米ドル)」のコモディティ相場の下落要因になり得ます。他の通貨建ての同じ商品に比べた割高感が醸成されることが、その一因です。

原油を除く、コモディティ銘柄が幅広く下落しているのは、「ドル高」が進行していることが一因と言えるでしょう。(ドル指数は上昇。グラフ内より)

図:主要銘柄の騰落率 2022年3月31日と9月30日を比較
図:主要銘柄の騰落率 2022年3月31日と9月30日を比較

出所:QUICKおよびInvesting.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。