[Vol.1337] 増産可!?「基準」「上限」「実際」を区別

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。88.81ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,674.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,735元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年11月限は684.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで785.1ドル(前日比12.6ドル縮小)、円建てで3,797円(前日比44円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月12日 13時22分頃 6番限)
7,816円/g
白金 4,019円/g
ゴム 229.5円/kg
とうもろこし 51,070円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「増産可!?『基準』『上限』『実際』を区別」

前回は、「『減産順守率の正常化』を起点に考える」として、金(ドル建て)相場の目先の動向に関する筆者の考えを述べました。

今回は、「増産可!?『基準』『上限』『実際』を区別」として、減産に参加するOPECプラス20カ国の原油生産量などについて、述べます。

「OPEC減産」に関わる報道に、筆者はやや引っ掛かりを感じています。「減産基準量(Reference Production)」「生産量の上限(超えないように求められている生産量Required Production 超えたら減産非順守)」「実際の生産量(Production)」が、明確に区別されないまま「減産」が独り歩きしていると感じるためです。

以下のグラフは、コロナショックなどの混乱による一時中断(2020年4月)後に再開した減産における、各数値の推移を示しています。先述の通り、「減産基準量」と「生産量の上限」は、OPECプラスが会合で決めていますが、「減産基準量」が変わることはあまりありません。(2020年5月以降は2022年5月と10月の2度のみ変更)

「生産量の上限」は、毎月の会合で翌月分を決定しています(来年より会合は6月と12月の年2回になる。臨時総会はある。今回の会合で決定)。この「生産量の上限」を引き下げることが、「報道上の減産」です。

報道されている「200万バレルの減産合意」は、「減産基準量」から「生産量の上限」を200万バレル引き下げることを合意したということを意味しています。ここに「実際の生産量」の話はありません。

つまり、「報道上の減産合意は、実際の生産量が減ることを約束するものではない」のです。おそらく多くの市場関係者は、「減産=生産量減少」と思っているのではないでしょうか。

グラフ内に書いた赤い丸「増産余地」は、およそ日量140万バレル分(9月比)です)。つまり、OPECプラスは、表向きは「大規模な減産をします」としつつ、実は増産が可能な環境にあるのです。産油国にとって増産は、収益拡大に結び付きます。(収益=単価×数量。増産は数量増加に寄与する)

OPECプラス内の非OPEC側には、ロシアとロシアに比較的関わりが深いカザフスタンなどがいます。今回の会合を機に、彼らの収益も増える可能性がある点に、留意が必要です。

図:減産に参加するOPECプラス20カ国の原油生産量など 単位:百万バレル/日量
図:減産に参加するOPECプラス20カ国の原油生産量など 単位:百万バレル/日量

出所:OPECの資料およびブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。