[Vol.1339] 世界を出し抜くOPECプラス

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。88.56ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,664.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,830元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年12月限は683.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで765.95ドル(前日比14.65ドル縮小)、円建てで3,767円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月14日 17時44分頃 6番限)
7,858円/g
白金 4,091円/g
ゴム 229.1円/kg
とうもろこし 51,300円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「世界を出し抜くOPECプラス」

前回は、「今回の会合は減産順守率の正常化に効果大」として、減産順守率の計算方法とそれを低下させる方法について、述べました。

今回は、「世界を出し抜くOPECプラス」として、OPECプラスの減産に関する主な報道について、述べます。

前回までの数回で、「減産順守率」を起点に、「減産基準量」「生産量の上限」「実際の生産量」といった各種数値を確認し、10月5日のOPEC・非OPECの会合の意味を考えました。この考察を通じて改めて感じたのは、表向きの報道(特に見出し)と実態の乖離があることです。

「報道上の減産合意は、実際の生産量が減ることを約束するものではない」(単に生産量の上限が下がっただけ)ということを、われわれ市場関係者(個人投資家の皆さんも)は意識をする必要があるでしょう。それには、毎月「実際の生産量」を確認していく必要があります。

以下のグラフのとおり、減産に関して主に報じられるのは、生産量上限の引き下げ・引き上げ幅(増減産量)の前月比です。しかし、これだけでは、OPECプラスの動向の全体像を把握することはできません。

OPECプラスは知っているのでしょう。実際の生産量の話でなくても、前月比だけでも、ニュースの見出しに「OPEC」、「減産」「合意」というキーワードが含まれていれば、OPECプラスの思惑通り(市場が勘違いをして)、原油価格が上昇することを。

今回の会合で、OPECプラス(ロシア含む)は「価格(単価)上昇」と「増産余地」の両方を手に入れました。インフレになやむ先進国は、してやられた印象です。

これ以上、OPECプラス(ロシア含む)の術にはまってはいけません(ロシアの収益をそぐ意味でも)。理解に時間と労力が必要、文字数が多くなる、などの都合を優先せず、「生産量の上限引き下げ」という言葉で「減産」を表現するべきであると、筆者は考えます。

図:OPECプラスの減産に関する主な報道 単位:千バレル/日量
図:OPECプラスの減産に関する主な報道 単位:千バレル/日量

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。