政治相場が高まる中で「ドルvs資源」の戦いが激化する

著者:菊川 弘之
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 バイデン米政権は10月11日、サウジアラビアとの2国間関係を見直す方針を明らかにした。「OPECプラス」が、米国の要望に反して11月以降の原油の大規模減産を決めたことが背景。長年の友好関係にある米国とサウジだが、中東の国際秩序も大きく変化していく可能性が高まっている。バイデン政権は「民主主義と専制主義の闘い」を外交の軸に掲げているが、中東には価値観で相いれない専制的な国家が多く、ロシアのウクライナ侵攻を巡っても、米国と距離を置く動きが顕著になっている。「民主主義を平和的に輸出する」のではなく、「戦争ビジネスと連携しながらアメリカ流の民主義を押し付ける」米国のやり方を、「人類の85%」が、好ましく思っていない事実に目を背けてはいけない。

 アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド大統領は、10月ロシアを訪問してプーチン大統領と会談している。サウジやUAEは、米国が敵視政策から在米資産を凍結されるなら、OPECは石油をドルでなく人民元やルピーなどの通貨で売るようにして、ドル回避を強める可能性が高い。ロシアに対し友好的な国による「新G8(中国、インド、ロシア、インドネシア、ブラジル、トルコ、メキシコ、イラン)」や、ユーラシア経済連盟(ロシアに加えて、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン)の中央銀行などは、米国からの制裁に備えてドルを使わない国際決済体制の具現化を急いでいる。

 この流れはドルの基軸通貨体制の揺らぎに繋がる。足もとは、ドルの一人勝ちが続き、ドル円も日米金利差や経常収支を材料に150円を伺う流れとなっているが、ニクソンショック以降、ドルの基軸通貨体制を支えてきた「ペトロダラー体制」(国際石油取引上の通貨をドルに一元化)の終焉が意識されて、「人類の85%」の「脱ドル」がテーマになると、急速なドル売り(金買い)が高まる可能性も中長期的には浮上するだろう。

NY金とドル・インデックス

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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