[Vol.1352] 拡大する米国の欧州向けエネルギー輸出

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。89.61ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,653.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,215元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年12月限は701.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで694.35ドル(前日比2.8ドル縮小)、円建てで3,489円(前日比14円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月2日 13時20分頃 6番限)
7,806円/g
白金 4,317円/g
ゴム 212.6円/kg
とうもろこし 50,660円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「拡大する米国の欧州向けエネルギー輸出」
前回は、「急増する米国の原油・天然ガス生産量」として、米国の原油と天然ガスの生産量を確認しました。

今回は、「拡大する米国の欧州向けエネルギー輸出」として、米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)を確認します。

欧州で発生しているエネルギー危機は、米国の原油・天然ガスの生産量・輸出量を増加させていると、筆者は考えています。ウクライナ危機勃発後から、「買わない西側・出さないロシア」という構図が鮮明になり、欧州ではエネルギーの供給減少懸念が強まっていることが、背景に挙げられます。

前回述べた、米国にとっての「旺盛な需要」とは、この欧州のことです。以下のグラフのとおり、特に、同じ化石燃料の中でも燃焼時の温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出量が少ないとされる「天然ガス」の輸出量が大きく増加しています。

この場合の天然ガスは「LNG(液化天然ガス Liquefied Natural Gas)です。天然ガスをマイナス162℃まで冷却して、液化したものです。液化することで体積は約600分の1になり、タンカーで輸送できるようになります。

天然ガス(LNG)の輸出量については、EU向けがアジア向けを上回っています。原油の輸出量については、長期視点でEU向けが増加傾向にあります。

また、EU向けの輸出額は、欧州で供給懸念が強まったウクライナ危機勃発以降、天然ガス(LNG)、原油ともに、アジア向けよりも高い状態にあることがわかります。

今、米国の石油業界にとって、「EU」という市場は魅力的に映っていることでしょう。ビジネス(お金)の面だけではなく、「脱ロシア(ロシア制裁+脱炭素)」をがんばる「EUを支援する」という意味が込められることも、輸出増加に拍車がかかっている一因であると、筆者は考えます。

図:米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)
図:米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)

出所:U.S. Census Bureauのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。