[Vol.1353] 非化石エネ利用・開発でウラン・EVも注目

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。90.20ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,650.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,285元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年12月限は710.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで715.8ドル(前日比9ドル拡大)、円建てで3,538円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月4日 17時23分頃 6番限)
7,798円/g
白金 4,260円/g
ゴム 213.1円/kg
とうもろこし 50,250円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「非化石エネ利用・開発でウラン・EVも注目」
前回は、「拡大する米国の欧州向けエネルギー輸出」として、米国のLNGと原油の輸出量(EU、アジア向け)を確認しました。

今回は、「非化石エネ利用・開発でウラン・EVも注目」として、ウランの生産量(上位5カ国)を確認します。

以前の「[Vol.1350] 『脱ロシア』でエネルギー業界が大きく変化」で、「脱ロシア」が、エネルギー業界に2つの変化を起こしていると述べました。「米国石油業界の活性化」と、「非化石燃料利用・開発 加速」です。以下のグラフは、後者に関わる、主要5カ国のウラン生産量の推移です。

2011年から昨年ごろまで、東日本大震災起因の原発事故発生(2011年3月)をきっかけに、日本、ドイツなどで原発の稼働を停止する議論が進んできました。こうした流れを受けてか、原子力発電の燃料となるウランの生産量は2015年ごろから減少し始めました。

しかし、今年2月にウクライナ危機が勃発したことで、ロシアに有利にならないようにするため(ロシア制裁徹底)、従来からの流れである「脱炭素」をさらに強化するため、化石燃料を使わないようにする「脱ロシア」のムードが一気に強まりました。

ロシア制裁徹底はエネルギーの需給ひっ迫の一因となっているため、EU諸国では制裁を徹底しつつ、ひっ迫を解消させるための方策が練られていました。EU諸国以外でも、世界的なエネルギー価格高を受け、電力価格が高騰していました。こうした背景を経て「原子力発電への回帰」が欧米日などで、進み始めました。

日本では従来型の原発を、高度な技術を使い、安全性を高めた「革新軽水炉」に改良して利用することが検討されはじめました。また、欧米では「小型モジュール炉」とよばれる、出力が従来型のおよそ3分の1程度の小型で比較的扱いやすい原子力発電施設が、政府の後押しもあり、実用化を迎えつつあります。

「小型モジュール炉」は、事故時に自然に冷える仕組みを備えている(安全性あり)、あらかじめ工場で部品を製造して現地で組み立てる(建設効率よい)、従来の大型炉に比べて建設できる地域が広い(工場など立地に柔軟性あり)、などの特徴があると、されています。

また、再生可能エネルギーの出力が弱まりやすいタイミング(夜間や、風や波がなぎのタイミングなど)を補う重要な発電施設になり得るとの声もあります。バイデン政権は、今年の夏、ウクライナの隣国であるルーマニアに「小型モジュール炉」の設置を支援すると表明しています。

「小型モジュール炉」の開発・利用が進めば、燃料である「ウラン」の需要が高まる可能性があります。そうなれば、減少傾向にあった生産量は増加に転じ、それにより、ウランを採掘したり原発のインフラを整備したりする企業に、ビジネス上の追い風が吹く可能性があります。

こうした発電所で作られた電力が広く使われるようになれば(相対的に化石燃料を燃やして作られた電力の量が減れば)、EV(電気自動車)の流通に拍車がかかる可能性があります。走行時に温室効果ガスを排出せずとも、発電時に同ガスを排出している機会が多いことが、EVの問題点として指摘されていますが、この問題への解決策の一つとなるためです。

図:ウランの生産量(上位5カ国) 単位:トンウラン
図:ウランの生産量(上位5カ国) 単位:トンウラン

出所:World Nuclear Association のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。