[Vol.1367] 「分断」は今後もインフレを加速させる要因に

著者:吉田 哲
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原油反発。産油国が警戒する安値価格水準まで下落したことによる自律反発などで。78.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,753.25ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,735元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年01月限は572.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで762.9ドル(前日比14.1ドル拡大)、円建てで3,509円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月25日 16時56分頃 6番限)
7,809円/g
白金 4,300円/g
ゴム 212.3円/kg
とうもろこし -円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『分断』は今後もインフレを加速させる要因に」
前回は、「危機勃発後、民主主義と距離をおく国が増加」として、ウクライナ危機関連の4回の国連決議(2022年)で賛成していない国、述べました。

今回は、「『分断』は今後もインフレを加速させる要因に」として、世界的なコスト・プッシュ型インフレ加速の経緯について、筆者の考えを述べます。

以下の図のとおり、今、私たちが直面しているコスト・プッシュ型インフレ(原材料価格高による物価高。需要がけん引して起きるデマンド・プル型の物価高ではない)には、ロシアを否定しない国々の思惑が絡んでいると考えられます。

図の中央で示した、「出さないロシア」「産油国による口先介入」などが、それにあたります。「出さないロシア」は、制裁目的で「買わない」運動を繰り広げている西側(資本主義陣営)に対抗するためのもの、「産油国による口先介入」は、「脱炭素」を推進する西側の運動に対抗する価格維持策として実施されている節があります。

そう考えれば、仮に「先に手をだした(事態が悪化するきっかけをつくった)のは、西側(資本主義陣営)とロシア、どちらか?」という問いに答える機会があったとすると、「西側(資本主義陣営)」と答えても間違いにはならない気がします。プーチン大統領は演説で「西側」を批判しますが、根底にはこのような考え方が、あるのかもしれません。

ウクライナ危機は、民主主義陣営と非民主主義陣営の間の溝を深くしています。同危機は、数年単位の民主主義陣営の国数減少に拍車をかけるきっかけになる可能性もあります。こうした相いれない「考え方」の相違は、第3者が介入することで折り合いが付くケースがありますが、世界を巻き込んだ「分断」ゆえ、第3者を探すことすら困難な状況にあるといえます。

それは、危機が長期化すること、引いてはコスト・プッシュ型のインフレが長期化する可能性があることを、示唆していると筆者は考えています。

図:世界的なコスト・プッシュ型インフレ加速の経緯(筆者イメージ)
図:世界的なコスト・プッシュ型インフレ加速の経緯(筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。