[Vol.1368] 最高額の資金が動くカタールW杯

著者:吉田 哲
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原油反落。中国の感染拡大起因のロックダウンによる景気後退懸念などで。73.94ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,762.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年01月限は12,855元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年01月限は548.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで766.45ドル(前日比0.25ドル拡大)、円建てで3,496円(前日比2円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月28日 18時19分頃 6番限)
7,788円/g
白金 4,292円/g
ゴム 213.3円/kg
とうもろこし 46,100円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『分断』は今後もインフレを加速させる要因に」
前回は、「『分断』は今後もインフレを加速させる要因に」として、世界的なコスト・プッシュ型インフレ加速の経緯について、筆者の考えを述べました。

今回は、「最高額の資金が動くカタールW杯」として、世代表チームやクラブに対してFIFAが行った財政的貢献について述べます。

「うぉー!」「日本!」「きゃー!」・・・筆者の家の周辺には、熱狂的なサッカーファンのお宅が複数あります。2018年の大会の時もその前も、そうだでした。日本代表がゴールを決めるたびに聞こえてくる「歓喜の悲鳴」は、もはや4年に1度の風物詩になっています。

また、筆者のYouTubeのおすすめ欄に表示される、とある「旅系YouTuber」のチャンネルは、現地から日本代表の試合の模様や、テレビではあまり報じられないであろう、海外から来場した人の宿泊施設の中、スタジアムや宿泊施設周辺の素の模様などを事細かに伝え、見る人のW杯熱をさらに高めています。

日本代表の躍進により、熱気を帯びるカタールW杯ですが、筆者はそうした熱に飲まれず、どこか冷めた目で試合を見ています。選手たちの躍動ぶりよりも、ピッチ(選手たちがプレーする芝生)周辺に掲示される「広告」に、しばしば目を奪われるからです。

以下のグラフは、FIFA(国際サッカー連盟)が代表チームやクラブに対して拠出した金額とその内訳です。2022年のカタール大会では、FIFAは10億ドルという巨額の拠出を行いました。「広告」にロゴが表示されるパートナーとスポンサーは、巨額の費用を投じW杯を支えています。

カタール大会の「賞金」の総額は、前回のロシア大会から10%増え、史上最高の4億4000万ドルです。報道によれば、優勝国が4200万ドル、準優勝国が3000万ドル、3位が2700万ドルのほか、ベスト8が1700万ドル、ベスト16(1次リーグ突破)が1300万ドル、1次リーグで敗退でも900万ドル(約13億円)とされています。

「準備金」は、大会の準備のために動くサッカー協会に支払われる額(カタール大会は7000万ドル)、「クラブへの給付金」は、ワールドカップでプレーする選手を一時的に開放するクラブに支払われる額(同3億1000万ドル)、「クラブ保護プログラム」は、代表としてプレーしている最中に負傷した選手への補償としてクラブに支払われる額(同2億2000万ドル)です。

「クラブへの給付金」と「クラブ保護プログラム」の額はブラジル大会(2014年)から増え始めています。FIFAが、選手を一時的に開放するクラブの負担の一部を追うことで、スター選手が大会に集結することを実現する狙いがありそうです。

巨額の「お金」が動くW杯。実際に、どのような国のどのような企業が、どれだけの資金を投じているのでしょうか。次回以降、FIFAのパートナー企業、スポンサー企業の動向に注目します。

図:代表チームやクラブに対してFIFAが行った財政的貢献 単位:百万ドル
図:代表チームやクラブに対してFIFAが行った財政的貢献 単位:百万ドル

出所:totalsportal.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。