[Vol.1370] W杯は、かつては西側、今は非西側で回っている

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。79.78ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,773.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年01月限は12,760元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年01月限は570.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで750.85ドル(前日比14.1ドル拡大)、円建てで3,447円(前日比18円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月30日 18時22分頃 6番限)
7,842円/g
白金 4,395円/g
ゴム 216.4円/kg
とうもろこし 46,160円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「中国企業が資金の主な供給源」
前回は、「中国企業が資金の主な供給源」として、カタール大会に向けたパートナー企業、スポンサー企業の拠出額について述べました。

今回は、「W杯は、かつては西側、今は非西側で回っている」として、W杯のパートナー企業、スポンサー企業数の推移(国別)について、述べます。

サッカー発祥の地は「英国」です。そしてその英国は、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで出場しています。

四つの地域のサッカー協会はそれぞれ個別に活動しており、FIFAへの加盟も英国としてではなく、個別に加盟しています。(カタール大会でヨーロッパ大陸の予選を通過したのはイングランド、ウェールズの二つ)。

また、1930年の第1回(ウルグアイ大会)から2018年の前回大会(ロシア大会)までの21回の大会で(1942年と1946年は第二次世界大戦の影響で中止)、3位以内に入った回数が多いのは欧州の国々です(45回、南米17回、北米1回)。

開催地となった回数が多いのも欧州の国々です(11回、南米7回、北米1回、アジア2回、アフリカ1回)。

92年間のW杯の歴史を振り返れば、「W杯と言えば欧州」と言えるでしょう。しかし、中国が資金拠出で突出した存在感を示しているとおり、2022年のカタール大会の「欧州色」は、従来よりも強くはありません。

以下のグラフは、1986年のメキシコ大会以降の、パートナー企業、スポンサー企業の数の推移(国別)です。

1990年のイタリア大会、1994年のアメリカ大会、1998年のフランス大会、2002年の日韓大会、2006年のドイツ大会など、1990年代から2000年代前半の大会では、積極的に欧州の企業は資金を拠出していました。日本企業も同様です。

この間のパートナー企業、スポンサー企業を務めた具体的な企業名(当時の名前含む)は、アルファ・ロメオ(イタリアの自動車メーカー)、オペル(ドイツの自動車メーカー)、コンチネンタル(ドイツのタイヤメーカー)、フィリップス(オランダの電気製品メーカー)、キヤノン、富士フイルム、JVC(日本の電子部品、電気機器会メーカー)などです。(ソニーは2010年の南アフリカ大会、2014年のブラジル大会、セイコーは1982年のスペイン大会、1986年のメキシコ大会でパートナー企業もしくはスポンサー企業を務めた)

パートナー企業、スポンサー企業で「欧州」が目立っていたわけですが、2014年のブラジル大会あたりから、中国企業の参入が目立ち始め、様子が変わります。

vivo(スマホメーカー)、万達集団(金融、不動産などの複合企業)、蒙牛乳業(乳製品メーカー)、ハイセンス(電気機器メーカー)、英利(太陽電池メーカー)などが名乗りを上げました。

中国企業の参入、そして今大会ではByju's(インドのオンライン学習関連企業)などの参入もあり、もはや「欧州」の影響度は低下傾向にあると言わざるを得ません。W杯はどんどんと「非西側化している」と言えるでしょう。

それは非西側の影響力が強まり、相対的に西側の影響力が低下していることを意味します。両者の間には「分断」があります。

図:W杯のパートナー企業、スポンサー企業数の推移(国別) 単位:社
図:W杯のパートナー企業、スポンサー企業数の推移(国別) 単位:社

出所:FIFAなどの資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。