[Vol.1376] 単収伸び鈍化、肥料の供給減は食料危機要因に

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.70ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,794.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は13,165元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年01月限は511.7元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで781.25ドル(前日比5.25ドル縮小)、円建てで3,512円(前日比2円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月8日 18時30分頃 6番限)
7,843円/g
白金 4,331円/g
ゴム 228.5円/kg
とうもろこし 44,650円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「単収伸び鈍化、肥料の供給減は食料危機要因に」
前回は、「世界3大穀物の収穫面積はもう増えない?」として、筆者が考えるウクライナ危機を起点に考える農業を取り巻く環境について、述べました。

今回は、「単収伸び鈍化、肥料の供給減は食料危機要因に」として、化学肥料の輸出国とロシア、中国、ベラルーシからの輸入国について、述べます。

この半世紀、人類は人口増加に対応すべく、技術革新と化学肥料の使用により、単収(生産効率)を上げきました。

収穫面積を増やしにくい中で、いかに生産量を増やすかに腐心してきたわけですが、実はこの10年間、単収の伸びに陰りが見えつつあります。

2000年から2010年まで、2010年から2020年までの、それぞれの単収の増加幅を確認すると、トウモロコシ、米、小麦、いずれも増加幅が縮小していることが分かります。(USDA(米農務省)のデータより)

このことは、技術革新に頭打ち感が出始めていることや、今、化学肥料の供給が途絶した場合、世界中で世界3大穀物の生産量が急減する可能性を示唆しているといえます。では、どのような国が化学肥料供給の担い手なのでしょうか。

化学肥料供給のおよそ28%は、「非西側」の急先鋒と言える、「ロシア」、ロシアの隣国で旧ソ連諸国の一つである「ベラルーシ」、そして中国です。(2020年 金額ベース)

各種報道によると、西側に経済制裁を科されているロシアとベラルーシは、化学肥料の輸出を大幅に減らして出し渋りをし、中国は事実上の輸出規制を行っているとのことです。

また、化学肥料が使えなくなった場合、世界の農産物生産量は4割減少するという試算があるとのことです。

「単収」が頭打ちである状態で、化学肥料の3割弱の供給を担う非西側3カ国が出し渋りをしています。事態は深刻であると言わざるをえません。

当該3カ国は化学肥料をどこに輸出しているのでしょうか。以下の図のとおり、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、インド、中国、タイ、ベトナム、米国、ウクライナ、オーストラリアなど、名だたる農産物生産国たちです。

図:化学肥料の輸出国とロシア、中国、ベラルーシからの輸入国(金額ベース)(2020年)
図:化学肥料の輸出国とロシア、中国、ベラルーシからの輸入国(金額ベース)(2020年)

出所:OEC(The Observatory of Economic Complexity)のデータをもとに筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。