[Vol.1386] 排ガス規制強化が単位あたりの同需要増加要因

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。78.48ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,823.95ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年05月限は12,690元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年02月限は548.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで821.6ドル(前日比1.5ドル縮小)、円建てで3,504円(前日比3円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月22日 大引け 6番限)
7,711円/g
白金 4,207円/g
ゴム 224.6円/kg
とうもろこし 44,220円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「排ガス規制強化が単位あたりの同需要増加要因」
前回は、「フォルクスワーゲン問題の意味を改めて考える」として、プラチナと金の価格推移を、確認しました。

今回は、「排ガス規制強化が単位あたりの同需要増加要因」として、プラチナと金の価格推移を、確認します。

フォルクスワーゲン問題が発覚したことで急減すると目された、プラチナの自動車排ガス浄化装置向けの需要ですが、実際のところ、急減はしていません。

コロナショックの際はやや大きめに減少したものの、2021年は回復。2022年も回復傾向が続くことが見通されています。それにより、2022年の同需要は、フォルクスワーゲン問題発覚時点(2015年)の水準とほとんど同じになります。

このグラフより、データが示す実態よりも、わかりやすい「イメージ」が優先されたかが、うかがえます。同問題発覚以降、ディーゼル車の生産台数が減少しているデータが散見されていたのも事実ですが、こうした環境の中でなぜ、プラチナの同需要は目立った減少を演じなかったのでしょうか。

筆者はそのヒントを、「自動車1台あたりの同需要」に見いだしました。以下は、主要PGMの同需要の合計を、その年に生産された自動車の台数で割った、自動車1台あたりの自動車排ガス浄化装置向け主要PGM(プラチナ、パラジウム、ロジウム)需要の推移です。

ここで言う「自動車」とは、乗用車、小型商用車、トラック、バスなどの四輪自動車です。「自動車1台あたり」に直すと、同需要が顕著に増加していることがわかります。自動車の生産台数が減少しても、1台あたりの需要が増加したため、全体的な需要は急減しなかったと、筆者は考えています。

統計上、2013年以降のプラチナの同データには「燃料電池車」向けの需要を含んでいるとされていますが、自動車の生産台数から考えれば、いまのところ、「燃料電池車」向けの需要がメインでこのグラフが上昇しているわけではないと、考えます。

「自動車1台あたりの同需要を」増やしたと考えられるのが、世界的な自動車排ガス規制強化です。主要国の排ガス規制は年々、強化されています。強化される規制に対応すべく、1台あたりに使われるPGMの量を増やしている、というのが筆者の見立てです。

西側諸国が「脱炭素」を推進しているうちは、こうした規制強化の流れは止まらず、それに従い、排ガス浄化装置に使われるPGMの数量は少なくとも横ばいで推移(自動車の生産台数が増加すれば増加)する可能性があります。

このため、今後も「フォルクスワーゲン問題」起因のプラチナの需要減少や価格下落は起きにくいと、筆者は考えています。

図:自動車1台あたりの自動車排ガス浄化装置向け主要PGM需要 単位:グラム/台


出所:Johnson MattheyおよびOICAのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。