[Vol.1401] 利下げ催促「市場」vs利上げ継続「FRB」

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。79.98ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,907.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は13,315元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年03月限は547.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで846.05ドル(前日比3.15ドル縮小)、円建てで3,577円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月17日 19時01分頃 6番限)
7,882円/g
白金 4,305円/g
ゴム 226.9円/kg
とうもろこし 43,450円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「利下げ催促『市場』vs利上げ継続『FRB』」
前回は、「金(ゴールド)急上昇!株高でも金高」として、NY金先物の価格推移を確認しました。

今回は、「利下げ催促『市場』vs利上げ継続『FRB』」として、2023年の各FOMC時点のFF金利見通し上位2位を、確認します。

足元、株式、コモディティ(商品)、債券、通貨など、幅広い市場において、金利動向(予測含め)が重要な変動要因になっているわけですが、FRBの高官たちは「インフレにしっかり向き合う」「金利の最高到達地点(ターミナルレート)の議論はまだ早い」など、利上げの温度感が低下するムードをけん制する発言をしています。

しかし「市場」は、FRBに対して「利上げ打ち止め」さらには「利下げ」を催促するように、利上げの温度感低下が今後も進行することを予測しています。

先週12日に発表された米国のCPI(消費者物価指数)が、事前予想や前回を下回る弱い内容だったことを受け、「インフレ鎮静化が本格化したのでは?」との思惑が広がったことも、催促の動きに拍車をかけていると言えます。

以下は、CMEが提供する「Fed Watch Tool」で示された、先物市場の動向をもとに算出された、今年2月から12月までの8回のFOMC(米連邦公開市場委員会)時点の、金利見通しの抜粋です。

同ツールでは、各FOMC時点の金利水準が、どのような水準にあるか、例えば4.25~4.50%、4.50~4.75%、4.75~5.00%、5.00~5.25%などの、水準ごとに確率が示されています。その中で、最も確率が高いもの(1位)と、その次に高いもの(2位)を抜粋しました。

1位をメインシナリオだとすると、「市場」(FRBではない)は、年央に「利上げ打ち止め」、年末に「利下げ」を予想していると、言えます(催促しているとも、言える)。

2位をあえて示したのは、予想のボリュームゾーン(多数派。ここでは1位に2位を加えて同ゾーンを測っている)がどう変化するのかを、見るためです。

グラフのとおり、年央は2位が1位よりも高い位置にあるため、「利上げ打ち止めとは、言いきれない」ムードがありますが、年後半は2位が1位よりも低い位置に移り、「利上げ打ち止め」を予想する向きが多数派になったと、解釈できそうです。

実際、1月13日時点の、12月13日のFOMC時点の金利見通しの確率は、「4.50~4.75%」が32.7%で1位、「4.25~4.50%」が30.5%で2位でした(1位と2位、合わせて60%超)。

足元、さまざまな価格は、「市場」の予測(催促)どおり、FRBが今年中に「利上げ打ち止め」、場合によっては「利下げ」を実施するかもしれない、という思惑が支配的になり、それに沿って、動いていると言えそうです。

図:2023年の各FOMC時点のFF金利見通し上位2位
図:2023年の各FOMC時点のFF金利見通し上位2位

出所:CME「Fed Watch Tool」のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。