「10大リスク」から2023年の商品市場を読む(2)

著者:菊川 弘之
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 今回も、ユーラシアグループ「10大リスク」を基に、今年のマーケットに与える影響を探ってみたい。

(3)Weapons of mass disruption:「大混乱生成兵器」

 10大リスクでは、「人工知能(AI)の技術的な進歩が社会の信頼を損ない、デマゴーグや権威主義者に力を与え、ビジネスや市場を混乱させている。」と指摘した。

 既に、フェイクニュースと真実の境界線を見極めることが困難となっており、客観的な判断・分析ができず、二極化・分断化は深刻さを増すだろう。マーケットにおいても、ヘッドラインでボラティリティが高まるケースも増えそうだ。ヘッドラインの真偽が不透明な場合、織り込みが行き過ぎるケース、その反動を含めて乱高下に注意すべき時代になっている。

 ロシア・ウクライナ戦争でも、双方のプロパガンダ合戦が行われており、いずれかだけを見ていても、正確な判断・予測はできない。マーケットでも心理学(認知的不協和)から、人間は買いのポジションを取った際には、買いに優しい材料やニュースを無意識に選択し、売り材料・下げ材料を排除してしまう傾向がある。マーケット参加者が昔から「ポジションを持っていない時には、よく当たるのに」と言うのは、この心理学的影響に囚われ、中立的な判断が出来なくなるためだろう。

ヒストリカル・ボラティリティ(20日、年率換算)
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

https://www.nstrading.co.jp/

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