「10大リスク」から2023年の商品市場を読む(2)

著者:菊川 弘之
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(4)Inflation shockwaves:インフレショック

 インフレは金利の急上昇にもかかわらず、粘り強いものとなるだろう。その原動力は、サプライチェーンの継続的な制約と、パンデミック時代の「過剰貯蓄」の残存であり、さらに決定的なのは、金融政策では対抗できないウクライナ戦争によるエネルギー価格の持続的な高騰である。

 米連邦準備理事会(FRB)は2月1日、米連邦公開市場委員会(FOMC)で、事前予想通り0.25%の利上げを決めた。利上げ幅は2会合連続で縮小し、通常のペースに戻った。パウエルFRB議長の記者会見で、「ディスインフレ(インフレ沈静化)のプロセスが始まった」とインフレ鈍化に言及し、3月を最後に利上げを停止する可能性を否定しなかったが、「10大リスク」では、インフレの鎮静化は一時的と見ている。

 足もとのマーケットは、年内利下げを期待する動きさえ見られるが、2023年末までを見通す時、商品市場が現在の値位置にとどまる可能性は、極めて低いように感じる。

 既に、中国需要を先取りして、非鉄・銅相場などは底打ち反転サイクルに入っており、季節要因やウクライナ問題が重なる春先~夏にかけては、穀物・エネルギーの上値リスク思惑が高まるだろう。

 米景気後退の軟着陸シナリオが急速に高まっているものの、インフレ次第で、ハードランディング・シナリオが急浮上する可能性は残ったままだ。今年のマーケットシナリオを考える上で、このインフレの行方が重要ポイントだ。

 新冷戦時代に入り、グロバーバリーゼーション時代のような物価安定期に戻るとは考えない方が良い。平時相場ではなく有事相場が常態の時代に入っている。

米英独日の消費者物価指数の推移
 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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