[Vol.1423] 「偶像」と化して急上昇する株価指数

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。78.36ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,854.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は12,565元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年04月限は574.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで940ドル(前日比3.65ドル拡大)、円建てで3,948円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月16日 18時46分頃 6番限)
7,894円/g
白金 3,946円/g
ゴム 219.2円/kg
とうもろこし 44,370円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『偶像』と化して急上昇する株価指数」
前回は、「『グローバル化』の長期視点の変化に注目」として、1990年以降のグローバル化の変遷について、筆者の考えを述べました。

今回は、「『偶像』と化して急上昇する株価指数」として、筆者が考える「偶像」と「実態」の推移(ここではS&P500先物とWTI原油先物を参照)について、述べます。

前回、「グローバル化」の状態が変化するについて、「現実」が「偶像」に、さらに「より偶像」に変化したと書きました。以下は偶像の一例だと筆者が考える米国の主要株価指数(S&P500種指数先物)と、現実の一例だと考える原油相場(WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物)の推移です。

※原油相場もしばしば需給データ以外の要素で動くため、必ずしも「現実」と言い切れません。しかし、売り手(産油国)と買い手(消費国)が、市場では基本的に対等の立場であることから、ここでは原油を現実に近い銘柄の一例としました。

あるアナリストは、米国株の長期視点の動向について筆者と議論をしているとき、「米国株が下がったら、世界が大混乱に陥る(おちいる)じゃないですか、だから下がりようがないでしょう?」と発言しました。この発言を受け、筆者は数秒、頭の中を整理するのに時間がかかりました。

つまりこのアナリストは、「米国株は投資家が望まない状態にはならない」と言っているのです。言い換えれば、「米国株市場は投資家の望みがかなう場である」となるでしょう。思惑が市場を決める。データは関係ない。ということでしょうか。

この発言を耳にして間もなく、筆者の頭の中をよぎったのは、もはや米国株市場は「市場」ではなく「偶像(神や仏のように崇拝の対象となっているもの)」と化しているのではないか、ということでした。

もし本当に「偶像」であるのであれば、米国株市場は大多数の市場関係者の願いに応えようと「下がるに下がれなくなっている」「下がることを許されなくなっている」のかもしれません(その意味では、今後も米国株式市場は、長期視点で上昇し得る)。

図:「偶像」と「実態」の推移(ここではS&P500先物とWTI原油先物を参照)
図:「偶像」と「実態」の推移(ここではS&P500先物とWTI原油先物を参照)

出所:Investing.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。