[Vol.1426] なぜ大幅下落でもインフレが沈静化しない?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。77.25ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,842.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年05月限は12,580元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年04月限は548.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで912.75ドル(前日比16.05ドル縮小)、円建てで3,912円(前日比20円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月21日 18時57分頃 6番限)
7,928円/g
白金 4,016円/g
ゴム 224.9円/kg
とうもろこし 44,800円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「なぜ大幅下落でもインフレが沈静化しない?」
前回は、「侵攻開始日から大幅下落した各種市場」として、「侵攻開始日(2022年2月24日)」から足元までの、各種銘柄の騰落率を確認しました。

今回は、「なぜ大幅下落でもインフレが沈静化しない?」として、「侵攻開始前(2021年12月30日)」から足元までの騰落率を確認します。

以下のとおり、全体的に大きな変動は起きていないことがうかがえます(前回述べた侵攻開始日やその後の急騰時に比べて、変動は格段に小さい)。

侵攻開始前(2021年12月30日)、金は1,820ドル、原油は75ドル、銅は9,700ドル、小麦は770セント近辺でした。ウクライナ危機に密接な関係があり、侵攻開始後に急騰したこれらの銘柄の足元の価格水準は、ウクライナ関連の環境が本格的に「きな臭く」なり始めた2022年1・2月より前の水準と、ほぼ変わりません。

足元のコモディティ価格の水準が、前回述べた(1)の侵攻開始日に比べると低くなったため、高インフレ(物価高)は去ったかのような錯覚に陥りそうですが、実際のところ、主要国では高インフレが継続しています。

CPI(消費者物価指数)を見てみると、米国が6.4%、英国が10.1%、ドイツが8.7%、ノルウェーが7.0%となるなど(いずれも2023年1月。前年同月比)、インフレの水準はまだまだ高いと言わざるを得ません。

コモディティ価格の水準が低下しているにもかかわらず、高インフレが継続しているのはなぜなのでしょうか。それは、足元の価格水準(≒侵攻開始前の水準)が、「長期的に見て」高水準だからです。

図:「侵攻開始前(2021年12月30日)」から足元までの騰落率
図:「侵攻開始前(2021年12月30日)」から足元までの騰落率

出所:QUICK、Investing.comのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。