[Vol.1438] 「非民主的国家」増加がはじまった

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。75.31ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,839.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年05月限は11,990元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年04月限は546.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで898.2ドル(前日比12.90ドル拡大)、円建てで3,962円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月10日 18時07分頃 6番限)
8,045円/g
白金 4,083円/g
ゴム 218.8円/kg
とうもろこし 43,140円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「積立の収益は『保有数量」×「最終価格』」
前回は、「積立の収益は『保有数量』×『最終価格』」として、3つの積立シミュレーションにおける累積保有数量について、述べました。

今回は、「『非民主的国家』増加がはじまった」として、金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数について、述べます。

前回、「積立」投資においては、価格が下落・低迷することで、収益に大きな影響を与える「保有数量」を効率的に増やすことができると、述べました。以下より、増やした数量を効率よく収益に変えるために欠かせない要素、「積立」投資のもう一つの生命線である、「最終価格」について、述べます。

[Vol.1435] 暴騰vs暴落、「積立」シミュレーション」で述べた3つのパターンいずれも、2063年からの10年間で「2,000円」、上昇することをシミュレーションに織り込みましたが、この間、それまで価格急落・低迷によって保有数量が大きく増加していた(3)大暴落パターンが、最も大きく資産の額を増やしました。

「最終価格」の上昇も、「積立」投資を効率化させるために、欠かせません。金(ゴールド)相場に、長期視点の価格上昇要素はあるのでしょうか。以下は、筆者が考える金(ゴールド)相場の動向を左右し得る、七つのテーマです。

七つのうち、中長期の「中央銀行」、超長期の「見えないリスク」が、長期視点の「最終価格」を押し上げる要因になると、筆者は考えています。今月、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所が公表した、「自由民主主義指数」の最新版(2022年版)は、これらの二つのテーマに関わる重要なデータです。

行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由・民主主義的な傾向を示す複数の要素から、このデータは計算されています。0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、その国は民主的な傾向が弱い、1に近ければ近いほど、その国は民主的な傾向が強いことを示します。

以下は中央銀行の金(ゴールド)保有量です。近年、世界全体で、中央銀行の金(ゴールド)保有量は増加しています。以下の通り、金(ゴールド)の保有量を増やしているのは、非民主的な傾向が強い国々の中央銀行です。

同研究所のデータによれば、非民主的な国の増加と民主的な国の減少が、同時進行しています。特に2020年に入り、新型コロナのパンデミック、ウクライナ危機勃発などの混乱に乗じ、非民主的な国の増加が目立ち始めています。まさに、世界規模の「分断」が目立ち始めていると言えるでしょう。

こうした「分断」、そしてそれをきっかけにした非民主的な国の中央銀行による金(ゴールド)保有高増加は、中長期・超長期視点の金(ゴールド)価格を押し上げる要因になると、筆者は考えています。

これはまさに、長期を前提とした「積立」投資を効率化するために必要な、「最終価格」の反発に貢献する要因になり得ると考えます。

図:金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数
図:金(ゴールド)保有増加上位と自由民主主義指数

出所: V-Dem研究所、WGCのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。