[Vol.1466] 民主的な国の供給量が、長期減少傾向

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。77.61ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,005.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,040元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年06月限は567.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで909.45ドル(前日比7.85ドル拡大)、円建てで4,044円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月20日 18時09分頃 6番限)
8,631円/g
白金 4,587円/g
ゴム 213.3円/kg
とうもろこし 43,420円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「民主的な国の供給量が、長期減少傾向」
前回は、「穀物価格は急騰後、高止まり」として、シカゴトウモロコシと大豆先物価格について、述べました。

今回は、「民主的な国の供給量が、長期減少傾向」として、民主的・非民主的な傾向が特に強い国のトウモロコシと大豆の生産シェアについて、述べます。

ウクライナ危機が沈静化するまで、鶏卵価格は優等生に戻れない可能性があると、筆者は考えています。同危機を沈静化させることは困難であるため、同危機をきっかけとして顕在化した非西側の主要な農産物供給国からの「出し渋り(時限的なものや示唆を含む)」が今後も続くことは、想像に難くありません。

ロシアは、黒海に面するウクライナの主要な港からの穀物輸出再開に難色を示し続けています。また、インドは2022年5月、国内の需給バランスと価格を安定化させるため、主要穀物の一つである小麦の輸出停止を宣言しました。

こうした動きは、戦時対応や自国の安全保障のため、などといわれていますが、実態としては「非西側」による「西側」への「出し渋り」であると考えられます。「非西側」による「出し渋り」への警戒感が、穀物相場全般を高止まりさせている一因になっていると、考えられます。

3月、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のV-Dem研究所は、「自由民主主義指数」の最新版(2022年版)を公表しました。この指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由度や民主度をはかる複数の観点から計算され、0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、非民主的な傾向が強い、1に近ければ近いほど、民主的な傾向が強いことを示します。

以下の図は、同指数が「0.7以上の民主的な傾向が特に強い国」と「0.3以下の非民主的な傾向が特に強い国」における、「トウモロコシ」と「大豆」の生産量(合計)のシェアの推移を示しています。2011年ごろから、「0.7以上の民主的な傾向が特に強い国」のこれらの穀物の生産シェアが目立って低下していることがわかります。

シェア低下の要因の一つに、「米国(0.74)」「EU(0.72、25カ国平均)」「カナダ(0.74)」などといった、民主的な傾向が特に強い国・地域の「トウモロコシ」「大豆」の生産量が頭打ちに状態にあることが挙げられます(2015年ごろがピーク)。

また、そもそも、2011年ごろから民主的な傾向がある国の数が減少している点も、民主的な傾向が特に強い国の穀物生産シェア低下の一因に挙げられます。こうした事実は、非民主的な国々の出し渋りが止まらない中にあって、民主的な国からの供給増加が望みにくいことを示していると言えるでしょう。

図:民主的・非民主的な傾向が特に強い国のトウモロコシと大豆の生産シェア


出所:V-Dem研究所およびUSDAのデータをもとに筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。