[Vol.1473] プラチナ短期:「三つの上昇圧力」が価格を支える

著者:吉田 哲
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原油反落。ドル指数の反発などで。75.89ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。1,988.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所) 労働節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心) 労働節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで906.75ドル(前日比2.25ドル縮小)、円建てで4,061円(前日比12円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月1日 16時30分頃 6番限)
8,699円/g
白金 4,638円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近)

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「プラチナ短期:『三つの上昇圧力』が価格を支える」
前回は、「相手への理解が原油高を終わらせるカギ」として、国内大手新聞の主要面の見出しを確認しました。

今回は、「プラチナ短期:『三つの上昇圧力』が価格を支える」として、プラチナ市場にかかっているとみられる「三つの上昇圧力」について書きます。

足元、国内外のプラチナ価格が騰勢を強めています。大阪のプラチナ先物価格はおよそ8年ぶりの水準に達しています。プラチナの主要な鉱山生産国である南アフリカで電力不足が発生し、供給懸念が浮上していることが一因です。

また、世界のプラチナ価格の指標とされるニューヨークの先物価格(ドル建て)は、およそ1年ぶりの高値水準です。国内の価格(円建て)が海外の価格(ドル建て)よりも上昇が目立っているのは、中長期視点で「ドル/円」が円安方向に推移しているためです。

足元、「銀行不安」が再び大きくなる中、FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。長期視点では、西側と非西側の対立が大きくなっている点にも注目しなければなりません。プラチナ価格は今後、どのように推移していくのでしょうか。

短期視点の、価格動向の振り返りと今後のポイントについて確認します。主要銘柄のおよそ半年間の騰落率を確認すると、プラチナ価格は10%強、上昇しました(先程述べた、ニューヨークプラチナ先物が1年ぶりの高値水準に達したことと関連)。

プラチナのほか、ドイツDAX(ドイツの主要株価指数)、上海総合(中国の主要株価指数)、S&P500、NYダウ、日経平均といった世界各地の主要国の株価指数、そして金(ゴールド)が上昇しました。

ざっくり言えば、この半年間、「プラチナ高・株高・金(ゴールド)高」だったわけです。この半年間における三つの関係は、以下のように示すことができます。「三つの上昇圧力」が、足元のプラチナ価格を上向かせていると言えます。

米国の利上げ温度感低下がもたらす「株高」が、プラチナの産業向け需要を拡大させる期待を増幅し(上昇圧力1)、同時に「金(ゴールド高)」が貴金属相場全体の上昇ムードを醸成している(上昇圧力2)と考えられます。加えて、主要鉱山生産国での供給懸念や金(ゴールド)に比べて安いことなど、プラチナ独自の材料も存在します(上昇圧力3)。

昨年、米国の利上げは「3倍速」と揶揄(やゆ)されたほど、急激でした。しかし今は、利上げの可能性は残っているものの、昨年よりもだいぶ温度感は低下しています。コモディティ(国際商品)価格の短期的な急騰が落ち着いたためです。このため今後、利上げの温度感低下が今よりも鮮明になる可能性があります。

この点は、短期視点のプラチナ価格の上昇要因になり得ます。(長期視点ではコモディティ価格がまだまだ高い点に留意が必要)

図:プラチナ市場にかかる「三つの上昇圧力」
図:プラチナ市場にかかる「三つの上昇圧力」

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。