[Vol.1477] 「脱米ドル」ではなく「脱西側」を目指す非西側

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。72.94ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,036.60ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,125元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年06月限は519.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで918.5ドル(前日比8.95ドル縮小)、円建てで4,122円(前日比5円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月10日 16時50分頃 6番限)
8,818円/g
白金 4,696円/g
ゴム (まだ出来ず)
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『脱米ドル』ではなく『脱西側』を目指す非西側」
前回は、「中銀の方針転換はウクライナではなくリーマン」として、中央銀行の金(ゴールド)買い越し幅について書きました。

今回は、「『脱米ドル』ではなく『脱西側』を目指す非西側」として、リーマンショックを起点に考える、非西側の金(ゴールド)保有増加の過程を考えます。

リーマンショック後、欧米が大規模な金融緩和を行ったため、異次元のレベルまで信用が膨張し、信用収縮への不安が急拡大しました。同ショックは、西側がよしとする、自由な競争を柱とした経済体制を揺るがしただけでなく、非西側の西側への支持を失うきっかけになったと筆者はみています。

また、2010年ごろから、西側は経済回復のため「環境問題」と「人権問題」を提唱しはじめましたが、「環境問題」を推進したことで、産油国・産ガス国との軋轢(あつれき)が大きくなり、「人権問題」を主張したことで、独裁国家からの反発を招きました。

西側がよかれと思ってしたことにより、西側と非西側の対立が激化してしまったわけです(その延長線上に、ウクライナ危機勃発があると、筆者は考えている)。

リーマンショック後、西側と非西側の対立が激化する中、非西側は「脱米ドル」ではなく「脱西側」を進めてきたと言えるでしょう。こうした中、非西側は、米ドルでもないユーロでもないポンドでもない通貨、「脱西側」を支えることができる通貨を、模索してきたと考えられます。

実際、リーマンショック後にロシア、中国、インド、トルコ、カザフスタンなど、名だたる「非西側」諸国が金(ゴールド)の保有量を増やしています。

図:リーマンショックを起点に考える、非西側の金(ゴールド)保有増加の過程
図:リーマンショックを起点に考える、非西側の金(ゴールド)保有増加の過程

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。