[Vol.1479] ロシアと中国は「8,100トン」を目指す?

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.89ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。2,006.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は12,015元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年06月限は494.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで917.4ドル(前日比1.90ドル拡大)、円建てで4,089円(前日比25円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月12日 18時33分頃 6番限)
8,685円/g
白金 4,596円/g
ゴム 208.9円/kg
とうもろこし 39,000円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「ロシアと中国は『8,100トン』を目指す?」
前回は、「インドとトルコはリーマンショック後に非西側化」として、リーマンショック以降、金(ゴールド)の保有量増加が目立った国(ロシア、中国、トルコ、インド、カザフスタン)の自由民主主義指数を確認しました。

今回は、「ロシアと中国は『8,100トン』を目指す?」として、主要国(中央銀行)の金(ゴールド)保有量などを確認します。

非西側主要国の急先鋒であるロシアと中国は何を目指しているのでしょうか。「基軸通貨の奪取」であるとすれば、「米国」を想定したゴールが浮かび上がります。金(ゴールド)の保有数量、「8,133トン」です。

2023年3月時点のロシアの金(ゴールド)保有高は2,326トン、中国は2,068トンです。ここから両国ともに、6,000トンもの金(ゴールド)を積み上げることができるのでしょうか。

ここで注目されるのが、両国の金鉱山生産量です。ロシアは世界2位でシェア9.2%、中国は世界1位でシェア9.3%です。ともに年間300数十トンの金(ゴールド)を生産しています。

もし彼らが本当に、「脱西側」の本丸ともいえる「自国通貨の基軸通貨化」を狙っているのであれば、ここから数十年間かけてコツコツと自分の国で産出した金(ゴールド)を積み上げていく可能性があります(モノを持つ国は強くてしぶとい)。

同時に、彼らが行う長期的な保有高増加は、非西側主要国の「脱西側」の象徴となり、そこに「分断」が存在することを強く印象付けるでしょう。この流れは「[Vol.1475] 円建て金は最高値更新、ドル建ては最高値タイも」で述べた「有事ムード」と「見えないリスク」を同時にあおることになると、考えられます。

ロシアや中国の中央銀行による長期的な保有高増加は、複数のテーマ起因の上昇圧力を生み、長期視点の金(ゴールド)価格の上昇要因になり得ます。

図:主要国(中央銀行)の金(ゴールド)保有量 単位:トン
図:主要国(中央銀行)の金(ゴールド)保有量 単位:トン

出所:WGCのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。