[Vol.1483] 「非西側」主導のコモディティ価格上昇発生

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.52ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,976.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期a貨交易所)反落。23年09月限は12,195元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年07月限は518.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで903.25ドル(前日比0.95ドル拡大)、円建てで4,124円(前日比20円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月18日 16時50分頃 6番限)
8,736円/g
白金 4,612円/g
ゴム 212.4円/kg
とうもろこし 37,780円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『非西側』主導のコモディティ価格上昇発生」
前回は、「『非西側』が台頭中、分断深刻化」として、民主的・非民主的な傾向がある国の数の推移を確認しました。

今回は、「『非西側』主導のコモディティ価格上昇発生」として、主要産油国の収支が均衡する時の原油価格(IMF予測2021・2022年の平均)と自由民主主義指数を確認します。

今、非西側が台頭しています(しつつある、ではない)。こうした状況は、コモディティ相場にどのような影響を与えるのでしょうか。例えば、足元、減産を強化して需給ひっ迫感を醸成し、原油相場を下げさせない動きを強めているOPECプラス(石油輸出国機構プラス:一部)の自由民主主義指数は以下のとおりです。

サウジアラビアが0.04、イラクが0.20、オマーンが0.14、クウェートが0.30、UAEが0.09です。これらの国は、非民主的な傾向が特に強い国です。そして、これらの国の、財政収支が均衡する際の原油価格はおおむね67ドルです。

西側が嫌がるインフレを振りまきつつ、自国の財政を安定化させる。これが、ほとんどが非西側諸国で構成されるOPECプラスが原油の減産に励む、深い動機でしょう。実際、3月に原油相場が急落した際(一時63ドル近辺まで下落)、すぐさま、減産強化を決定しました。

彼らが行っているのは、「出し渋り」にほかなりません。西側が嫌がるのをわかりつつ、そうした行為を行う背景には、「西側」への反発心があるためだと、考えられます。

また、主要農産物(小麦、トウモロコシ、大豆)の生産シェアと自由民主主義指数に注目しても、同指数が比較的低い、ブラジル(近年、急激に非西側化)、インド、ウクライナ、中国、ロシアといった非西側諸国の生産シェアが44.9%に上ります。これは、西側の主要生産国のシェア(38.1%)を大きく上回る値です。

昨年、インドは、自国の食料の安全保障を強化するため、小麦の輸出を停止しました。こうした行為もまた、OPECプラスが行う原油の減産と同様、西側が嫌がるのをわかりつつ、「西側」への反発心がきっかけで行われた「出し渋り」であると、考えられます。

非西側の台頭は、彼らが持つ資源が武器として利用される機会を増やし、西側へのインフレ継続のきっかけになっていると、考えられます。非西側の台頭(西側だったものの非西側に転向した国もある)は、コモディティ相場を底上げする要因であると、言えます。

図:主要産油国の収支が均衡する時の原油価格(IMF予測2021・2022年の平均) 単位:ドル/バレル
図:主要産油国の収支が均衡する時の原油価格(IMF予測2021・2022年の平均)

出所:IMF(国際通貨基金)およびV-Dem研究所(スウェーデン)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。