[Vol.1489] 燃料や食料の価格はまだ高止まりか

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。71.53ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,945.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,770元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年07月限は515.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで914.4ドル(前日比2.30ドル縮小)、円建てで4,227円(前日比62円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月26日 11時41分頃 6番限)
8,741円/g
白金 4,514円/g
ゴム 208.2円/kg
とうもろこし 39,500円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「燃料や食料の価格はまだ高止まりか」
前回は、「西側と非西側が真の議論をすることを望む」として、リーマンショックを起点に考える原材料価格高止まりの背景についての筆者の考えを述べました。

今回は、「燃料や食料の価格はまだ高止まりか」として、G7時にゼレンスキー氏が発したメッセージの真意について、筆者の考えを述べます。

[Vol.1485] 日本の日曜日は無事終わった」で述べた、「どんなもの(人)でもまずは存在を認める」「自分の価値観だけで物事を考えてはならない」と言った大学教授の言葉に従い、今からでも、「環境問題」や「人権問題」を、非西側とひざを突き合わせて、改めて議論をスタートする必要があるでしょう。そうしないと、何十年たっても、真の「環境問題」、真の「人権問題」の解決に至ることはないでしょう。

今後も、こうした真の議論がないまま、西側が「環境問題」や「人権問題」を一方的に解決する姿勢を崩さない場合、非西側との分断が直らず、ウクライナ危機、ひいては物価高が継続してしまう可能性があります。ゼレンスキー氏の平和への訴えは、西側と非西側とで、諸問題について真の議論をしてほしい、という訴えでもあると筆者は感じています。

また、ゼレンスキー氏は、ウクライナ戦争は日本の人にも関わりがあって、この戦争が終われば、日本の皆さんが直面している物価高も終わる可能性がある、というメッセージを残していったと筆者は感じています。しかし残念ながら、あの日曜日、みんながみんな、同氏と物価高が密接な関係があると感じたとは言い難い状況でした。

同氏がちびまる子ちゃんの代わりにテレビに映ったとき、ある母親は同アニメを楽しみにしていた子供に、「戦争で苦しんでいる国のリーダーが、平和になるよう被爆地に祈りに来た」という趣旨の説明をしたそうです。また、「事件や災害でもないのに、子供向けの番組を休止する必要があるのか?」という趣旨の疑問を呈した方もいらっしゃったようです。

こういった趣旨の発言を見ると、「あの人の国が戦争の影響を受けている、あの人の国が平和になるように祈りに来た」、「今の物価高を異常な事態だと認識してない」など、まるでわたしの国では何も起きていない、物価高や戦争を、どこか他人の事のように感じている節があるように感じてしまいます。

「戦争は物価高の原因である(その戦争を終わらせようとゼレンスキー氏は動いている)」、ウクライナ戦争の影響は、海の向こうだけではなく、わたしたちの身近にすでに及んでいる、という認識がもっともっと、広がるとよいように思います。

こうした認識が広がらないと、当事国以外からの、戦争を終わらせようという世論が起きにくいと考えます。こうした認識が広がるまでは、戦争やそれをきっかけに起きている物価高が続く可能性があると、筆者はみています。

図:ゼレンスキー氏のメッセージの深意
図:ゼレンスキー氏のメッセージの深意

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。