[Vol.1488] 西側と非西側が真の議論をすることを望む

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反発などで。74.08ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反落などで。1,958.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,710元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年07月限は529.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで927.75ドル(前日比6.50ドル縮小)、円建てで4,289円(前日比100円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月25日 大引け時点 6番限)
8,759円/g
白金 4,470円/g
ゴム 207.0円/kg
とうもろこし 39,300円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「西側と非西側が真の議論をすることを望む」
前回は、「ゼレンスキー氏は物価高を終わらせるカギ」として、原材料の価格動向に関するさまざまな思惑を確認しました。

今回は、「西側と非西側が真の議論をすることを望む」として、リーマンショックを起点に考える原材料価格高止まりの背景についての筆者の考えを述べます。

ウクライナ危機を終わらせるには、「[Vol.1485] 日本の日曜日は無事終わった」で述べた大学教授の言葉にならい、異なる考えを持った国が存在することを認めなくてはなりません。その際、自分の価値観だけで物事を考えてはなりません。

ウクライナ危機を勃発させた、西側と非西側の間にある「分断」はどのような過程を経て生じたのでしょうか。この過程をたどることで、分断の根本原因(≒ウクライナ危機の遠因)が見えてきます。つまりこれが、原材料価格を高止まりさせている、我々の生活を脅かしている物価高(インフレ)の原因でもあるのです。

さまざま議論があることは承知していますが、物価高←ウクライナ危機勃発←世界規模の分断深化←西側・非西側の対立発生という流れの起点(根本原因)となったのはリーマンショックだったと筆者は考えています。

同ショックが発生したことで、非西側諸国において、西側の経済体制や思想への不信感が高まりました。また、西側は経済回復のため「環境問題」「人権問題」などのテーマを創造しましたが、こうしたテーマは産油国や権威主義国といった非西側諸国に負の圧力をかけるきっかけとなり、一層、西側と非西側の分断を深めました。

同ショック後の経済回復のために西側が行ったテーマ創造が西側と非西側の分断を深めたことについては、多くは語られていません。

しかし、西側によるテーマ創造やその後の西側の動きが、異なる考えを持った国(非西側)との深いコミュニケーションの上で行われたものなのか、再点検をする必要があると、筆者は考えています。そのことが、世界規模の分断を直すきっかけになると考えているからです。

以前の「[Vol.1469] しないはずの『置き去り』に非西側は失望」で、SDGsで起きないはずの「置き去り」が起きたと述べました。この点がまさに、異なる考えを持った国(非西側)と深いコミュニケーションがなされなかった証だと言えます。(環境問題や人権問題をきっかけに西側のビジネスが活発化し、逆に非西側のビジネスが弱体化の危機に直面したことは、非西側にとってあまりにも不平等に感じられただろう)

図:リーマンショックを起点に考える原材料価格高止まりの背景
図:リーマンショックを起点に考える原材料価格高止まりの背景

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。