[Vol.1498] 彼らが原油の減産をする理由(短期視点)

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。72.47ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,961.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,130元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年07月限は535.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで932.7ドル(前日比1.10ドル縮小)、円建てで4,231円(前日比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月8日 17時04分時点 6番限)
8,737円/g
白金 4,506円/g
ゴム 214.0円/kg
とうもろこし 40,750円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「彼らが原油の減産をする理由(短期視点)」
前回は、「OPECプラスの内部事情は悲喜こもごも」として、OPECプラスにおける2023年6月と2024年の生産量上限の差(増産余地の増減幅)について、述べました。

今回は、「彼らが原油の減産をする理由(短期視点)」として、主要産油国の財政収支が均衡するときの原油価格について、述べます。

OPECプラスはなぜ、原油の減産をするのでしょうか。短期視点の理由は、「原油相場が安くなるから」です。一定の目安まで下落すると追加減産を決定したり、減産期間を延長したりして、減産を強化することがあります。

今年4月の追加減産決定は、3月の銀行の連鎖不安を背景とした原油相場の急落が主因、今回の減産期間延長は5月の米国の債務上限問題噴出などを背景とした急落が主因だったと考えられます。3月も5月も、原油相場(WTI原油)は70ドルを下回りました。

以下の資料はIMF(国際通貨基金)が示した主要産国における財政収支が均衡するときの原油価格です。赤の点線で囲った中東の湾岸産油国(5カ国)の均衡価格は、67ドルくらいだと考えられます。OPECプラスの70ドルを下回ると減産を強化する傾向と符合します。

今後もOPECプラスは、彼らが「安い」と感じる水準まで原油相場が下がったとき、減産を強化する策を講じる可能性があります。「[Vol.1495] OPECプラス、2024年までの減産継続を決定」で述べたとおり、閣僚会合並みに権限が大きくなったJMMC(共同閣僚監視委員会)は、二カ月に一度、行われます。少なくとも二カ月に一度、彼らは原油価格を上昇させるための具体的な策を講じる機会を有しています。

図:主要産油国の財政収支が均衡するときの原油価格(IMF予測2021・2022年の平均)単位:ドル/バレル
図:主要産油国の財政収支が均衡するときの原油価格(IMF予測2021・2022年の平均)

出所:IMF(国際通貨基金)および V-Dem研究所(スウェーデン)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。