[Vol.1509] 銅と小麦は、グローバルサウス起因で価格上昇も

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.47ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,928.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)、端午節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心)、端午節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで999.45ドル(前日比2.25ドル拡大)、円建てで4,624円(前日比18円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月23日 17時07分時点 6番限)
8,807円/g
白金 4,183円/g
ゴム 205.1円/kg
とうもろこし 44,600円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「銅と小麦は、グローバルサウス起因で価格上昇も」
前回は、「第三国ではなく、非西側と分類すべし」として、リーマンショックを起点に考える、西側・非西側間の「分断」とコモディティ相場への影響について、筆者の考えを述べました。

今回は、「銅と小麦は、グローバルサウス起因で価格上昇も」として、グローバルサウスの声サミット参加国の銅の鉱山生産シェアについて、述べます。

以下の図は、同サミット参加国の銅の鉱山生産シェアの推移です。世界全体の60%強です(2021年時点)。世界の銅生産において、彼らは驚異的なシェアを有しています。

同サミット参加国の主要生産国は、チリ(28% 世界1位)、ペルー(12% 同2位)、コンゴ(6% 同4位)、ザンビア(4% 同7位)などです。

西側が電化で「環境問題」への策である「脱炭素」を進めている中にあって、同サミット参加国(≒グローバルサウス)が、西側との思想の相違を盾に、出し渋り(資源の武器利用)を強める可能性は、否定できません。

また、西側と非西側の「分断」は長期化の様相を呈しているため、出し渋り長期化→需給ひっ迫懸念長期化→銅などの非鉄価格長期上昇、というシナリオは否定できません。

「出し渋り」のほか、「大量購入」の懸念もあります。同サミット参加国の小麦輸入シェアを確認すると、輸入に回る小麦の半分以上を、彼らが購入しています。

しばしばニュースで目にする、「食料の安全保障」というキーワードは、買い占めの動機になり得ます。異常気象により、バッタが大量発生したり干ばつが起きたりして、しばしば飢饉(ききん)に見舞われるアフリカ諸国の多くは、同サミット参加国です。同サミット参加国の「大量購入」にも警戒が必要です。

同サミット参加国(≒)グローバルサウスによる、「出し渋り」や「大量購入」は、コモディティ(国際商品)価格を、全体的に押し上げる要因になり得ます。銅価格の上昇は、その他の非鉄金属(アルミニウムや亜鉛、鉛など)の価格を上向かせる、小麦価格の上昇は、その他の穀物(トウモロコシや大豆など)の価格を上向かせる場合があります。

西側と非西側の分断が深まれば深まるほど、非西側に属する「グローバルサウス」の存在感が強まることが予想されます。引き続き、グローバルサウス各種データ(人口、GDP、自由民主主義指数、国連決議の回答動向、銅の生産量、小麦の輸入量など)、それらに呼応して動く可能性があるコモディティ価格の動向に、注目が必要です。

図:グローバルサウスの声サミット参加国の銅の鉱山生産シェア
図:グローバルサウスの声サミット参加国の銅の鉱山生産シェア

出所:USGSのデータおよびインド外務省の資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。