[Vol.1514] この半世紀で起きたコモディティ市場の変化

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.19ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,912.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。23年09月限は12,080元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年08月限は546.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1009.85ドル(前日比1.25ドル縮小)、円建てで4,725円(前日比1円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月30日 16時32分時点 6番限)
8,860円/g
白金 4,135円/g
ゴム 206.0円/kg
とうもろこし 43,150円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足  単位:セント/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「この半世紀で起きたコモディティ市場の変化」
前回は、「エルニーニョでも農産物価格が下落する場合も」として、エルニーニョ現象とトウモロコシと大豆の価格推移について、述べました。

今回は、「この半世紀で起きたコモディティ市場の変化」として、この半世紀で起きたコモディティ市場の変化について、筆者の考えを述べます。

以下は、筆者が考える、この半世紀で起きた、コモディティ(国際商品)相場の見方の変化です。

前回述べたとおり、30~50年前はおおむね「エルニーニョ現象発生 ≒ 価格急騰」と言えたわけですが、現在は、エルニーニョ現象が起きていなくても、急騰し得ます。2000年ごろ以降、市場構造を揺るがした出来事とは、「コモディティ(国際商品)銘柄の金融商品化(ETF[上場投資信託]などで)」、そして「欧米などによる大規模な金融緩和(危機時)」です。

これらにより、大量の投機マネーが投資対象の垣根を超え、縦横無尽に行き交う環境が出来上がりました。こうした大きな変化は、コモディティ(国際商品)市場に「独自材料の(相対的な)影響度低下」という、土台をほんのわずかにずらす、目立たなく、かつ甚大な変化をもたらしました。

有事でも金(ゴールド)価格が上がらない場合がある、OPEC(石油輸出国機構)が減産をしても原油価格が上がらない場合がある、エルニーニョ現象が発生しても穀物価格が上がらない場合がある・・・。2000年以前の相場環境に詳しい人にとって、釈然としない相場展開がこの20年余り、続いているのは、こうした背景があったためだと、筆者は考えています。

「スーパーエルニーニョ」は、もしかしたら、穀物・農産物価格を大暴騰させるかもしれません。しかし、何も起こせないかもしれません。「なぜこれだけのエルニーニョ現象なのに、暴騰しないのだ!?」と、過去の常識で説明できなくなった相場と対峙(たいじ)し、心が揺れるかもしれません。しかし、それが「今どきの相場」なのです。

少なくとも次の三つ、(1)周辺材料(株や通貨などとの関係)、(2)独自材料(従来の変動要因)、(3)これまでにない新しい材料(環境・人権関連など)を俯瞰(ふかん:全体を一望)することが欠かせません。

「有事だけ」「減産だけ」「エルニーニョ現象だけ」が、コモディティ相場を動かす材料ではありません。「過去の常識にとらわれない柔軟な発想が、正しい分析を手繰り寄せる」。筆者はこの言葉に従い、情報配信を行っています。

こうした考え方に基づけば、「エルニーニョ現象にとらわれない価格上昇シナリオ」を描くことができるようになります。

図:この半世紀で起きたコモディティ市場の変化

図:この半世紀で起きたコモディティ市場の変化

出所:筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。