[Vol.1536] 小麦:ウクライナ危機起因の供給減少懸念も

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。82.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,985.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は12,195元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年09月限は625.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1050.6ドル(前日比11.05ドル拡大)、円建てで4,691円(前日比28円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(8月2日 大引け時点 6番限)
8,937円/g
白金 4,246円/g
ゴム 198.0円/kg
とうもろこし 40,990円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●シカゴ小麦先物(期近) 日足  単位:ドル/ブッシェル
シカゴ小麦先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「小麦:ウクライナ危機起因の供給減少懸念も」
前回は、「NYダウ13連騰とコモディティ高の背景」として、NYダウが13連騰した時のコモディティ(国際商品)市場の環境について、述べました。

今回は、「小麦:ウクライナ危機起因の供給減少懸念も」として、ウクライナ産穀物の主な輸出経路について、述べます。

前回通り、小麦の上昇率は特に大きくなりました。米国発の「需要増加観測」と「他通貨建て・同商品に対する割安感醸成」という二つの上昇圧力に加え、ウクライナ危機(2022年2月勃発)起因の世界的な供給減少懸念が大きくなったことが、上昇率を大きくしたと考えられます。

以下は、ウクライナ周辺の図です。ウクライナ産の穀物を輸出する場合、海路(メイン)と陸路(臨時的側面あり)、どちらかを用います。7月17日(NYダウ連騰のさなか)、ロシアは、黒海を経由した穀物輸出に関わる合意を停止しました(合意がない場合、事実上、穀物の輸送船はロシアが封鎖した黒海を行き来できなくなる)。

「合意停止」の報道だけでも、世界的な供給減少懸念を高めるには十分ですが、それに輪をかけたのが陸路における制限です。EU(欧州連合)は域内五カ国(ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア)の穀物価格の安定を理由に、ウクライナ産穀物の輸入を制限しています。

ゼレンスキー大統領(ウクライナ)は、24日、輸入制限措置を予定通り9月15日で終了するよう、EUに求めました。今のところ、これら五カ国は年末まで、制限措置が延長されることを求めていると、報じられています。

海路でも陸路でも、ウクライナ産穀物が輸出しにくい状況になっています。ウクライナ産穀物を多く輸入していたアフリカや中東の一部の国では、食料価格高が起き、政情不安が拡大することを懸念する声が出ています。

ウクライナ国内のモノ余り懸念という下落圧力を、ウクライナが穀物を供給できないことで生じる需給ひっ迫という上昇圧力が凌駕(りょうが)している、と言えそうです。

図:ウクライナ産穀物の主な輸出経路
図:ウクライナ産穀物の主な輸出経路

出所:MapChartをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。