[Vol.1570] 「そもそもはじめから安い」の効用

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。88.75ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,947.00ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は14,000元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年11月限は685.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1020.75ドル(前日比4.05ドル縮小)、円建てで4,827円(前日比5円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月21日 16時37分時点 6番限)
9,181円/g
白金 4,354円/g
ゴム 232.7円/kg
とうもろこし 39,500円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『そもそもはじめから安い』の効用」
前回は、「『暴落』が運用を好転させる場合あり」として、前々回述べた積み立てシミュレーションの累積資産額について、述べました。

今回は、「『そもそもはじめから安い』の効用」として、積立投資においてそもそも価格が安い銘柄が持つ効用について、述べます。

ここまで、追加分を含めて二つ、シミュレーションをしました。これらの結果から、積立投資に適した銘柄の特徴が浮かび上がってきます。「そもそもはじめから安いこと」、そして「長期視点で価格上昇が望めること」です。

「そもそもはじめから安い」銘柄を選択することで、効率よく保有数量を増加させることができるでしょう(もともと高かった価格が大暴落するよりも保有数量を増加させることができる。前回述べたシミュレーションより)。

また、「長期視点で価格上昇が望める」銘柄を選択することで、積み立て開始から数十年間、積み上げた保有数量を効率的に収益化しやすくなるでしょう(前々回述べたシミュレーションより)。

裏を返せば、「すでに高い」かつ「長期視点で価格上昇が望めない」銘柄は、積立投資に適さないと言えます。こうした銘柄は、保有数量を効率的に増やすことができないだけでなく、最終的に収益化ができない恐れがあります。

また、「すでに高い」ことがきっかけで、長期視点プロジェクトである積立投資を遂行する上で大きな障害になり得る、精神面での問題が生じる場合があります。

「すでに高い」ことは、すでに下落する余地が存在していることを意味します。こうした銘柄を選択した場合、数十年間、積立投資をしながら、絶えず、価格が大きく下がることへの不安と付き合わなければなりません。

価格下落が保有数量を効率的に増やす好機だと、深いレベルで考えられるようになるまでは、精神的にしばしば、積み立てを続けることが厳しいと感じるかもしれません。

さらに、「すでに高い」ことは、長期的に価格が下落し続け、最終的な価格反発を享受できない可能性が存在することを意味します。このような可能性を認識しつつも、長期視点で価格上昇が起きてほしいと、無理にでも自分に言い聞かせ、自分の心に期待を植え付けなければならない場面があるかもしれません。

また、価格が小刻みに反落するたびに、不安になったり、期待が裏切られた気持ちになったりするかもしれません。

長期視点の価格上昇が起きるかどうかは、実際のところ、その時になってみなければわかりません。ですが、少なくとも、「そもそもはじめから安い銘柄」を選択すれば、上記で示したような、さまざまな精神面での障害を回避できると、筆者は考えます。

どの銘柄で積み立てをするかは、投資家の皆さま一人一人がご自身で判断できることです(人気があるから、著名人が推奨しているから、などの理由は、高値で推移する銘柄で積み立てをはじめる理由にはならないと、筆者は考えます)。

図:「そもそもはじめから安い」の効用


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。