[Vol.1590] 過去を清算させるための戦争

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。中東情勢悪化による供給減少懸念などで。89.78ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回り反落などで。1,996.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年01月限は14,455元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年12月限は695.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1090.7ドル(前日比8.40ドル拡大)、円建てで5,247円(前日比18円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(10月20日 17時51分時点 6番限)
9,558円/g
白金 4,311円/g
ゴム 257.3円/kg
とうもろこし 40,900円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「過去を清算させるための戦争」
前回は、「ウクライナ戦争勃発が遠因」として、イスラエルを取り巻く各種環境について述べました。

今回は、「過去を清算させるための戦争」として、改めて、イスラエルを取り巻く各種環境について述べます。

中東情勢関連の情報をまとめている最中、筆者の頭の中に一つのキーワードが生まれました。「西側が行った過去の行為を清算させるための戦争」です。

イスラエル建国後、アラブ人の居住地をユダヤ人が武力で奪ったわけですが、その大きなきっかけを作った英国、そしてそれに加担し続けている米国の行為を清算させるために勃発したのが今回の戦争だと筆者は考えています。

今回の戦争は第二次大戦後、断続的に武力で奪われた土地のほとんどを奪還する意図を持った戦争、と言えるのではないでしょうか(ハマスは一部ではなくほぼ全部を奪還したいと考えていると言われている)。

また、世界の環境改善を盾に脱炭素を進め、産油国の収益を西側に移転させたり(石油収入減→EV等の売上増)、石炭を駆使して発展しているさなかの国を停滞させようとしたりしている西側の行為を清算させるための戦争が2022年2月に勃発した。

ウクライナ戦争は、西側の考えを逆手にとり、要らないと言われた石油を言われたとおりに出さないことで相手を追い込んでいる戦争、と言えるのではないでしょうか。

西側は今、非西側から大きな(大きすぎる)しっぺ返しを受けているのかもしれません。もし本当に、数十年間蓄積した恨みが戦争の原動力になっているのであれば、イスラエル・ハマス戦争もウクライナ戦争も、すぐに終わる非常に可能性は低いでしょう。

それだけでなく、世界各地でこれまで西側が行った所業を清算させる意図を持った別の戦争が勃発する可能性すらあるでしょう。

いよいよ世界は、危機が底流することが当たり前の時代になったと言えるかもしれません。特に金(ゴールド)は、危機による不安感が相場を押し上げる要因になることがあります(別文脈の下落要因があればその限りではないことに注意が必要)。

筆者の予感が的中してしまい、今回の戦争が「西側が行った過去の行為を清算させるための戦争」という、これまでにない新しい意味を持っているのであれば、用心が必要です。

数十年後にこの戦争を振り返った時、あれは「第五次中東戦争」だった、などという事態になることも、ある程度は想定しておいてもよいのかもしれません。

図:イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)
図:イスラエルを取り巻く各種環境(2023年10月中旬時点)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。