金買い続く、第五次中東戦争の可能性も

著者:菊川 弘之
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 ハマスとイスラエルとの大規模な軍事衝突で、米欧諸国がイスラエル支持を鮮明にするなか、中東の国々ではパレスチナ擁護の声が強まっている。米国の仲介でイスラエルとの関係正常化交渉を行っていたアラブ世界の盟主サウジアラビアのムハンマド皇太子は、「パレスチナの人々が正当な権利、公正で恒久的な平和の達成を求めるにあたり、パレスチナの人々の側に立ち続けている」と、パレスチナ自治政府のアッバス議長との電話協議で明言した。更に、サウジアラビアは、イスラエルとの国交正常化交渉を停止。サウジアラビア外務省は13日、「パレスチナ人をガザから強制的に退避させるという(イスラエル側の)要請は断じて認められない。ガザで無防備な市民を標的にし続けていることを非難する」と声明を出した。長年にわたるイスラエルとの対立とパレスチナ占領の歴史から、今回の戦闘はパレスチナの「大義」として捉えられる国も多く、懸念されているイランへのイスラエル・米国からの攻撃が実施されれば、第五次中東戦争の引き金にもなりかねない。

 また、中国の王毅外相は14日、サウジアラビアのファイサル外相と電話会談し、イスラエルについて、「自衛の範囲を超えている。国際社会と国連事務総長の呼び掛けに応え、ガザ市民への集団懲罰を停止すべきだ」と非難した。米国のダブルスタンダードに異を唱える国々も多く、G20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明にはハマスとイスラエルの対立に関する直接的な言及はなく、G20内の分断も浮き彫りになっている。米国の覇権・ドルの基軸通貨体制の揺らぎが大きくなりつつある中、短期的な急伸に対する調整はあっても金の押し目買いは継続しそうだ。


 

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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