[Vol.1636] いまも残る「あの呪縛」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。75.47ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,078.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,935元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。24年02月限は574.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1080.25ドル(前日比6.05ドル拡大)、円建てで5,071円(前日比15円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月27日 17時35分時点 6番限)
9,487円/g
白金 4,416円/g
ゴム 252.6円/kg
とうもろこし 37,660円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「いまも残る『あの呪縛』」
前回は、「2024年は短期視点の反発を予想」として、FRB利下げ実施時のプラチナ市場を取り巻く環境について述べました。

今回は、「いまも残る『あの呪縛』」として、プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題について述べます。

フォルクスワーゲン問題の呪縛とは、2015年9月に発覚したドイツ自動車大手のフォルクスワーゲンが違法な装置を使って不正に排ガス浄化装置のテストを潜り抜けていたことが発覚した際に生まれた、同社の主要車種であるディーゼル車への信用が損なわれ、同車の排ガス浄化装置に多用されているプラチナの需要が激減して価格が暴落するとささやかれた、まことしやかなうわさによる価格下押し圧力のことです。

以下は、プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題のあらましです。問題発覚当時、多くの市場関係者が、プラチナはもうダメだ、プラチナの需要は激減する、プラチナ価格は暴落する、などとうわさをしました。中にはプラチナはもうダメだから金(ゴールド)を買った方がよい、などとプラチナをだしにして金(ゴールド)を売り込もうとする営業マンもいました。

こうしたまことしやかなうわさ話が支配的となり、プラチナ価格は長期的な低迷期に入ることを余儀なくされました。まさに彼らが思い描いた通りの展開となったわけです。

問題発覚前まで長年にわたってプラチナとの価格差が活発に議論されていた金(ゴールド)の価格が急上昇しても、プラチナ価格は低迷したままです。その意味では、フォルクスワーゲン問題の呪縛は続いていると言えるでしょう。

図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題
図:プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。