[Vol.1637] 呪縛があったから積立が活きている

著者:吉田 哲
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原油反落。米国の原油在庫の増加などで。74.06ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,097.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年05月限は13,870元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年02月限は563.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1079.4ドル(前日比1.95ドル拡大)、円建てで5,018円(前日比38円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月28日 12時23分時点 6番限)
9,488円/g
白金 4,470円/g
ゴム 253.1円/kg
とうもろこし 37,500円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス
NYプラチナ先物(期近) 月足  単位:ドル/トロイオンス

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「呪縛があったから積立が活きている」
前回は、「いまも残る『あの呪縛』」として、プラチナの需要内訳とフォルクスワーゲン問題について述べました。

今回は、「呪縛があったから積立が活きている」として、筆者が行ったシミュレーション上のプラチナと金(ゴールド)の保有数量の推移について述べます。

呪縛と聞くとマイナスのイメージを抱く方は多いと思います。呪縛は自分の思いに反して、誰かがもたらすさまざまな束縛を受け続けることだからです。フォルクスワーゲン問題がプラチナ相場にとって呪縛であるのは、問題発覚を機に生まれたまことしやかなうわさによって、価格上昇が阻まれているためです。

しかし、呪縛がプラスの要素を生んでいるケースもあります。「積立」でプラチナに投資をしていた場合、呪縛によって上値を抑えられていた期間に、保有数量が大きく増加したのです。

以下の図中の条件で積立を行ってきたとすると、足元の保有数量は、呪縛によって価格低迷を強いられてきたプラチナが約363グラム、価格が大暴騰した金(ゴールド)は約267グラムでした。プラチナの保有数量は金(ゴールド)の1.3倍強になったのです。

保有数量が1.3倍であることは、仮に今後同じ上昇幅を獲得した場合でも、プラチナの収益が金(ゴールド)の1.3倍になる、ということです。

同シミュレーションに基づけば足元、累積の資産額では約88万円の差がありますが、その差分である約88万円を埋めるために2,500円程度上昇すれば達成できます(同じ額の利益を生み出すためには、金(ゴールド)は約3,300円程度の上昇が必要です)。

呪縛によって長期的な低迷を強いられたものの、足元のプラチナの資産の額は投資金を上回り、利益が出ています。価格低迷時に保有数量が効率的に増えた結果です。積立投資は、月々の投資金が変わらない場合、価格が下落すればするほど、購入できる数量が増えるためです。

呪縛がむしろ、保有数量を効率的に増やし、資産の額を大きくするきっかけになっていたと言えるでしょう。

図:保有数量の推移 単位:グラム
図:保有数量の推移 単位:グラム

出所:楽天証券のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。