商品先物投資を行う場合の2つの留意点

著者:近藤 雅世
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ある新聞記者から商品先物取引を行う時の注意事項を簡単に述べてほしいと依頼があった。インタビューで答えたのは、以下の2点であった。

① 例えば東京商品取引所で金先物の標準取引を行う場合、金の10月後半の証拠金額は10万8千円なので、たとえば100万円の資金があるとすれば、1枚か2枚しか取引をしないこと。

 多くの人は100万円あると、7枚ほどの金先物を取引したがる。

 100万円の資金があるのに、1枚10万8千円しか使わないと残りの資金がもったいないように感じるからだ。しかし、過去の例だと、東京商品取引所の金価格は、1日で▲502円下がったことがある(2011年)。

 平均でも150円程度は毎日動いている。金の倍率は1000倍なので150円の損益は1枚当たり15万円となる。100万円持っていて1日15万円の損失ならまだ耐えられるが、これが7枚持っているとすでに1日で15万円×7枚=105万円の損益の発生となる。

 損失の場合は翌日に追加証拠金を納付しなければならない。

 リスクマネージメントとしては、100万円で1枚しか、取引していなければ少々価格が変動しても追加証拠金を請求されるまでには何日かかかり、余裕をもって損切りして新たに取引することが出来る。

 これが商品先物取引を行う最初の注意点である。

② 投資と博打の違いは博打は予想することがほとんどできない。

 サイコロの目はランダムに出現し、トランプのカードは過去に出たカードをすべて覚えていたとしても、何組かのカードの残りの中から次に何が出るかを予測する確率は非常に小さい。

 一方投資は、ある程度背景となる情報を元に、次に価格がどうなるかは予測することが出来る。

 従って、商品先物取引にせよ、株式投資にせよ、為替であっても、何等かの理由や根拠があって投資しなくてはならない。無心に投資するのは博打と同じ確率となる。

 幸い、商品価格は個別の銘柄の株価を予測するよりはるかに需給に関する情報量が多い。だから、ただ単に金価格は上がると思って金を買うのではなく、今世界の景気が悪いから、とか中東で紛争が起きそうだから、或いは世界的に金融緩和が進展しそうだからとか、マイナス金利で、資産家が銀行から資金を引き出しそうだからといった根拠を持って投資をすべきである。直近では米中の貿易協議が妥結すれば、株価やドルは上昇し、金価格は下落するだろうと思うと金を買う時期ではないような気がする。

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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