[Vol.1664] イランリスクは金(ゴールド)高要因

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.14ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,049.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)春節のため休場。

上海原油(上海国際能源取引中心)春節のため休場。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1150.9ドル(前日比2.35ドル縮小)、円建てで5,442円(前日比3円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月9日 11時29分時点 6番限)
9,764円/g
白金 4,322円/g
ゴム 279.0円/kg
とうもろこし 37,450円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス
出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「イランリスクは金(ゴールド)高要因」
前回は、「イラン経済を疲弊させた欧米の制裁」として、イランの原油輸出量と財政均衡に必要な原油価格について述べました。

今回は、「イランリスクは金(ゴールド)高要因」として、金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)について述べます。

イランが西側諸国に原油を輸出できない状態にあることは、映画「海賊と呼ばれた男」の時代をほうふつとさせます。自分たちの資源を自分たちのために使うことができない、という意味においてです。

イランの原油埋蔵量は世界第三位です(オイルサンド除く)。豊富な資源を持っているものの思うように輸出できない環境を強いられている状態はイランにとって本意ではないはずです。

もちろん、イラン自身も原油輸出量の減少や財政収支均衡に必要な原油価格の異常な高騰が、国際社会に受け入れられない核兵器開発の代償であることを認識しているでしょう。

ですがイランは今まさに、核兵器開発をちらつかせたり、イスラエル・ハマスの戦争勃発を機に活動を活発化させているイスラム武装組織に支援をしたりして、世界を混乱の渦に引き込み、短中期的な「有事ムード」をかき立てています。

また、イランはOPECプラスの一員として産油国としての影響力を誇示したり、2024年1月よりBRICSに加わったりして、「非西側の急先鋒」としてめきめきと頭角を現しています。つまりイランは既に、近年目立つ、西側と非西側の分断の行方を左右し得る重要な立ち位置にあると言えます。

国際社会はすでに、イランによる「これまで受けてきた制裁への反動」が顕在化するリスクを認識しなければならない時期に入っていると、筆者は考えています。イスラム武装組織への支援は、その一環として行われているとの認識も必要でしょう。

西側・非西側の分断が長期化の様相を呈している中で、イランが積年の想いをぶつけるように、これまで以上に分断を深めてしまう可能性があるため、西側は長い時間軸でイラン起因のリスクに対応していく必要があります。

イラン起因のリスクは、短中期的にも、超長期的にも、資金の逃避先需要を強める金(ゴールド)相場の上昇要因になり得ると、筆者は考えています。アジアカップ終了後も、長期視点でイランに注目していく必要があります。

図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)
図:金(ゴールド)に関わる七つのテーマ(2024年 筆者イメージ)

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。