週刊石油展望

著者:児玉 圭太
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比1.09ドル高の79.58ドル、ブレント原油は1.30ドル高の83.50ドルとなった。

 前週末の海外原油は弱い米経済指標を手掛かりに反発。この日発表された米ISM製造業景気指数、2月のミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が市場予想を下回る低調な内容となったことから早期の米利下げ開始期待が再燃し、ドル安を追い風としてWTIで一時80ドルを突破する流れとなった。

 先週も上値抵抗線を突破できず高値持ち合い相場の様相。週明け4日は利益確定の売りで反落。3日のOPECプラス会合で日量220万Bの自主減産を6月まで継続することで合意、この日も上値を試す展開でスタートしたが、買い一巡後は利食い売りに押されマイナス圏に沈んだ。翌5日は続落。中国の全人代で経済成長率を5%と据え置き、目標達成は容易ではないとの見解を示したことから中国の景気減速懸念が強まり、原油が売られた。6日は米エネルギー需給の引き締まりを受け反発。EIA統計で原油在庫の増加が限定的だった一方、石油製品在庫が大幅減となった。製油所稼働率も84.9%まで回復しており季節的な需要の上振れが意識された。また、パウエルFRB議長が議会証言で年内に利下げを開始すると発言したことも支援要因となった。7日は小反落。中国の1-2月の石油輸入が前年比5.1%増の日量1074万Bとなったことを好感した買いに支えられたものの、IEA幹部がオスロの会議で「世界の石油需要が鈍化してる一方、米国からの供給は増加している」との発言を受け高値警戒感からジリ安の相場展開となった。

原油チャート

 今週の原油相場は下値は堅く戻り高値更新なら一段高を伺う展開が想定される。WTI期近は瞬間的に80ドル台に乗せるものの定着できず、下値切り上げの高値もみ合い相場が続いている。昨年12月13日に67ドル台を付けてからの戻し相場も3ヵ月近く経過しており日柄的には一旦調整局面の懸念もあるが、パウエルFRB議長が今年中の利下げを明言したことから株高、ドル安の流れでリスクオンムードが高まってきている。材料的には中東地域の地政学的リスクが引き続きメインテーマ。イスラエルとハマスの停戦協議は10日からのラマダン入り後も続けられるとの報道が上値を抑えているが合意の可能性は期待薄とみられる。逆にバイデン米大統領が一般教書演説で人道支援物資の輸送のため米軍がガザ地区に港を建設することを表明する予定で、新たな火種に発展する可能性には注意が必要だ。

 

 

今こそOKACHI HPリニューアルキャンペーン実施中

このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。